研究実績の概要 |
申請者のグループは、免疫系リンパ球の分化・増殖に関わる複数のサイトカインに共通な受容体サブユニットc 鎖の発見を起点に、gc鎖欠損マウスが免疫不全症モデルになることを示し、NOD-SCID マウスとの交配により、免疫不全NOGマウスを共同で作出し た(Blood, 2002)。NOG マウスは、現在、最も免疫不全が強いマウスとして知られている。これまでに申請者らはNOG マウスを用いて、ヒト造血幹細胞移植によ る免疫系ヒト化マウスの作出や、ヒト白血病発症モデルを確立してきた。申請者らはさらに、NOGマウスに癌手術検体を移植することによってPDX (Patient Derived Xenograft)株を樹立し、生体内の癌組織の複雑性を反映した腫瘍の継代を可能とした。 PDX は、以下の点で癌幹細胞探索に最適な手段である免疫不全マウスにおける造腫瘍能は癌幹細胞の形質を大きく反映し、 PDX は患者における 病理学的特徴を保持し、PDX の継代を繰り返すと癌幹細胞分画が濃縮する。 本研究計画では、既に作成済みあるいは今後作成する頭頸部癌PDX を用いて、PDX 初代樹立株と複数回継代した株(PDX亜型とする)を比較することで、多くの点が不明なままである頭頸部癌の癌幹細胞維持機構を明らかにする。 本年度は継代を繰り返した検体を網羅的遺伝子発現解析に供し、時系列に従って上昇・低下する遺伝子を同定し、その機能解析を行った。ノックダウンやノックアウトを樹立し、スフェア形成能や増殖能・造腫瘍能を解析することで検討を進めた。
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