研究課題/領域番号 |
18K09335
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛 |
研究代表者 |
水足 邦雄 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 病院 耳鼻咽喉科科, 講師 (40338140)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 感音難聴 / 耳鳴 / 有毛細胞 / シナプス / ウイルスベクター / 遺伝子治療 |
研究実績の概要 |
耳鳴の発症および増悪を動物モデルにおいて客観的に評価し、その原因を末梢聴覚受容体のみならず大脳辺縁系の神経機能を含めて解析することによって、これ まで病態が不明であった耳鳴の発症・増悪のメカニズムを可視化することを目的に研究を行った。 まず、耳鳴動物モデルマウスの作成を行った。我々は耳鳴が 比較的高頻度に出現するモデルとして、衝撃波誘発難聴・耳鳴モデルを作成した。この衝撃波誘発難聴・耳鳴モデルは難聴の程度が軽度であるにも関わらず明ら かな耳鳴が出現することが明らかとなった。このような軽度難聴に伴う耳鳴は、臨床でしばしば難治性であり治療に難渋することが多く、より臨床像に近い動物 モデルである。難聴のレベルは、最も臨床で耳鳴を合併することの多い60dB程度の中等度感音難聴に設定した。 上述の方法で作成および評価を行ったモデル動 物に対して、治療遺伝子を搭載したセンダイウイルスベクターを内耳に投与するため、まずレポーター遺伝子を 搭載したウイルスベクターの投与を行った。セ ンダイウイルスはヒトに対して毒性を持たないRNAウイルスで、細胞内に侵入したウイルスは細胞質内のみで転写、増殖を行い、宿主の核内へインテグレーショ ンを起こさない特性を持っている。レポーター遺伝子(GFP)を搭載したセンダイウイルスベクターを蝸牛正円窓から効率よく投与する方法を考案し効率的な内耳 への遺伝子導入が確認できた。また、レポーター遺伝子だけで無く治療因子であるFGF-2を搭載したセンダイウイルスベクターも安全に投与可能であった。
一方で、さらなる難聴治療実験を行う予定であったが、新型コロナウイルスの流行により研究の遂行に大幅な遅れが生じ、研究期間を一年延長した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルスの流行により研究の遂行に大幅な遅れが生じ、研究期間を一年延長した。
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今後の研究の推進方策 |
上述の方法で作成したモデル動物に対して、末梢内耳の詳細な組織学的評価を行う。蝸牛においては、音響刺激の受容体である蝸牛有毛細胞および一次ニュー ロンであるラセン神経節、さらには両者を結合するシナプス、特に感覚受容細胞に特異的に発現しているsynaptic ribbonについて詳細な定量評価を行う。定量 評価はsurface preparation法による免疫組織学的手法を用いるが、本方法は内耳における周波数別に定量評価を行うことができるため、耳鳴の生じている周波 数毎の詳細な受容体および一次ニューロンの定量を行うことが可能である。 さらに上述の方法で作成および評価を行ったモデル動物に対して、治療遺伝子 (FGF-2)を搭載したセンダイウイルスベクターを内耳に投与することで治療実験 を行う。この遺伝子はすでに内耳への保護効果がin vitroおよびin vivoで確認 されているだけでなく、FGF-2を搭載したセンダイウイルスベクターがすでに慢性重症虚血肢に対して臨床試験中であり、安全性についても担保されている。こ の治療後もマウスについて機能的な解析を行うことで、FGF-2の有効性について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス流行のため、計画通りに実験を行うことができなかったため、余剰金が生じた。今年度に実験を振り替えて計画通り使用する 予定である。
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