研究課題
耳鳴の発症および増悪を動物モデルにおいて客観的に評価し、その原因を末梢聴覚受容体のみならず大脳辺縁系の神経機能を含めて解析することによって、これ まで病態が不明であった耳鳴の発症・増悪のメカニズムを可視化することを目的に研究を行った。 まず、耳鳴動物モデルマウスの作成を行った。我々は耳鳴が 比較的高頻度に出現するモデルとして、衝撃波誘発難聴・耳鳴モデルを作成した。この衝撃波誘発難聴・耳鳴モデルは難聴の程度が軽度であるにも関わらず明ら かな耳鳴が出現することが明らかとなった。このような軽度難聴に伴う耳鳴は、臨床でしばしば難治性であり治療に難渋することが多く、より臨床像に近い動物 モデルである。難聴のレベルは、最も臨床で耳鳴を合併することの多い60dB程度の中等度感音難聴に設定した。 上述の方法で作成および評価を行ったモデル動 物に対して、治療遺伝子を搭載したセンダイウイルスベクターを内耳に投与するため、まずレポーター遺伝子を 搭載したウイルスベクターの投与を行った。セ ンダイウイルスはヒトに対して毒性を持たないRNAウイルスで、細胞内に侵入したウイルスは細胞質内のみで転写、増殖を行い、宿主の核内へインテグレーショ ンを起こさない特性を持っている。レポーター遺伝子(GFP)を搭載したセンダイウイルスベクターを蝸牛正円窓から効率よく投与する方法を考案し効率的な内耳 への遺伝子導入が確認できた。また、レポーター遺伝子だけで無く治療因子であるFGF-2を搭載したセンダイウイルスベクターも安全に投与可能であった。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
Sci Rep
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10.1038/s41598-021-94080-0.
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