近年、頭頸部癌治療に免疫チェックポイント(PD-1/PD-L1)阻害薬が導入され大きなインパクトを与えているが、治療に抵抗性を示す症例も多い。最近、この抵抗性を解く鍵として腫瘍を取り巻く炎症環境が注目されている。特にIL-6をはじめとした炎症性サイトカインは癌細胞の活性化のみならず、腫瘍免疫応答に関与しており、これらの併用阻害によって抗PD-1抗体による治療効果が相乗的に増強することが報告されている。 我々はこれまで細胞膜タンパク質であるCD147の癌進展への関与を研究し、CD147の発現が頭頸部癌の転移に強く関連することを臨床サンプルによる検討で明らかとした。また、炎症反応において主要な役割を持つS100A9とCD147の結合が頭頸部癌細胞の遊走能を亢進させることを確認している。また、CD147を中心とした頭頸部癌と炎症性微小環境のメカニズムの解明に取り組み、炎症に関連するとされるケモカインであるCXCL12 (stromal cell-derived factor 1:SDF-1)とその受容体であるCXCR4の頭頸部癌における機能として、SDF-1/CXCR4軸が下咽頭扁平上皮癌細胞株であるFaDuの遊走能と浸潤能を誘導することを確認した。またこれらの癌進展能の亢進にCD147によって誘導される細胞内シグナル伝達経路が介在していることを確認し、SDF-1/CXCR4軸により誘導される頭頸部癌進展の機序を解明してきた。 本研究では、炎症に関与する主要なサイトカインであるIL-6と頭頸部癌細胞の腫瘍進展能についての検討を行った。この結果、IL-6が頭頸部癌細胞の遊走亢進に関与することを明らかとした。
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