研究実績の概要 |
唾液腺導管癌は、乳腺導管癌に類似した病理組織像を呈し、悪性度の極めて高い唾液腺腫瘍である。発生母地の観点からは、正常唾液腺に発生する新規癌と、多形腺腫に由来する悪性転化癌とに大別される。さらに、ヒト上皮増殖因子受容体2型(HER2)の遺伝子増幅の有無を軸としてゲノム医療(precision medicine)の格好のターゲットになりうる。しかし現状では症例選択に十分なバイオマーカーが確立されていない。本研究は、多施設から集積した唾液腺導管癌検体のゲノム解析研究と、疾患動物モデル(PDX; Patient-Derived Xenograft)を用いた実験的研究とを組み合わせ、 患者選択の基準となる治療効果予測因子を同定することを目的とする。今年度は下記を実施した。 1.臨床情報の収集と病理組織学的評価:パラフィン包埋標本を用い、以下を評価。組織亜型、腺被膜外浸潤、壊死の有無と程度、Comedo型壊死、腺管形成、核の大きさ、核異型スコア、核分裂像スコア、組織学的グレード、核グレード、炎症細胞浸潤、脈管侵襲、神経周囲浸潤、切除断端、免疫組織染色(AR, ERα/β, PgR, HER2/3, EGFRなど)。 2.ゲノム解析:パラフィン包埋標本あるいは新鮮凍結標本からDNA/RNAを抽出し、以下の解析を実施。次世代シーケンサーを用いた癌関連遺伝子(MSK-IMPACTをベースとした約480遺伝子)のエクソン領域の解析。他に、遺伝子コピー数解析、遺伝子発現解析、融合遺伝子検出、hypermutator phenotypeの同定、 マイクロサテライト不安定性(MSI; Microsatellite Instability)の検出。
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