研究実績の概要 |
平成31(令和元)年度にはthy1-Brainbow3.2マウスの導入を試みた。現在、Tgマウスを使用するにあたり2つの課題があることが分かった。1)Tgマウスは(HemiもしくはHomi体)Wtマウスと比較して成長速度が遅い傾向がある。2)Creの導入率に差がある。AAV-Cre投与による遺伝子発現を試み。10^9, 10^11, 10^13 GC/mLのAAV-hSyn-Cre、AAV-CaMKII-Creを50μL, 100μL, 500μLずつ経頭蓋、軽内耳的に感染させたが、脳、内耳ともにGFPの発現は認められなかった。またThy1-YFP-Hマウスの蝸牛組織を観察したところ蝸牛神経にYFPの発現はみられなかった。先行分文献ではThy1-YFP-12マウスの蝸牛神経におけるYFP発現を認めることから、プロモーターの差ではなくCre導入率の差が原因であると考えられた。
嗅覚系においては、8週齢のC57BL/6マウスをコントロール食群(104 kcal/週)と36%カロリー制限食群(CR群、67 kcal/週)とに分けて、蝸牛、嗅上皮、嗅球での免疫組織学的所見、幹細胞・遺伝子分布を比較検討した。3ヶ月経過後、CR群ではコントロール群に比べ嗅細胞数ならびに成熟嗅細胞数が有意に減少していた。メチマゾール投与にて障害を起こした2ヶ月後の嗅上皮の回復過程はCR群で有意に抑制され、特に腹側領域において顕著であった。Real-timePCRでは、炎症性サイトカイン(IL-6およびCL-1)の発現がCR群において上昇していた。以上より嗅覚系においてはカロリー制限は負の効果をもたらすことが明らかになった。
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