研究課題
再発転移頭頸部癌に対するニボルマブの奏効率は十数%程度、病勢制御率は30-50%程度であり、最適化投与のためのバイオマーカーの開発が必要である。本研究課題では、ニボルマブを投与した患者16例のがん組織の遺伝子解析を行い、臨床病理学的所見との関連を検討した。対象症例のがん部のホルマリン固定パラフィン包埋組織からgDNAを抽出し、がんとの関連が判明している409の遺伝子のエクソン領域を調べるためのターゲットパネルを用いてパネルシークエンスを行った。遺伝子変異は、がん抑制遺伝子群(TSG)やチロシンキナーゼ受容体群(RTK)、Notchパスウエイ群(NOTCH)、PI3Kパスウエイ群(PI3K)に分けて検討した。ただし、TP53変異に関しては、dbSNPに記載があるものや、生殖細胞変異で報告のあるものを除外し、体細胞変異由来でpathogenicであると考えられるもののみを残した。65歳未満の9例において、奏効率は22.2%、病勢制御率は77.8%であり、Tumor mutation burden (TMB)がHighの3例はいずれも病勢制御群に含まれていた。また、Progressive disease (PD)の2例はいずれも、NOTCH、PI3K、RTKのいずれにも変異がなかった。65歳以上の7例において、奏効率は28.6%で、病勢制御率は42.9%であり、TMBと病勢制御との関連は認めなかった。NOTCH、PI3K、TSGの全てで変異があったのは、病勢制御3例中1例(33.3%)であるのに対して、PD 4例中3例(75.0%)であった。TP53変異は、65歳未満のPD 2例中の1例のみでNonsense変異が認められた。以上より、65歳未満と以上でニボルマブ投与に対する反応のみならず、遺伝子変異のプロファイルも異なっているようであった。