頭頚部癌は進行した状態で初めて診断されることが多く、1/3以上が stage IV であるという報告が多い。特に舌癌を含む口腔癌は罹患者が多く、治療方法として手術が選択され手術による完全切除が治療の目標となる。しかしながら切除検体断端に明らかな癌を認めず、完全切除できたと思われた症例でも切除部位の再発を多く認めるのが現状であり、そのことが口腔癌の治療成績向上を妨げている。切除後深部断端に局所再発した場合は肉眼的に観察困難であるため、特に深部断端における癌細胞残存の有無の評価は非常に重要となる。しかしながら深部断端は通常粘膜ではなく筋組織や結合織であることが多く、比較的広範囲となるため、現状での顕微鏡的な手法での癌残存の有無の評価は術中では困難かつ不十分となっている。近年頭頚部癌特異的なメチル化により発癌をきたす遺伝子が多く報告されてきており、患者唾液から採取したそれら遺伝子のDNAメチル化を検出することで早期発見を試みる報告や切除後の断端におけるメチル化が局所再発の予測因子となる可能性が報告されている。以上より正確な術後の深部断端の細胞採取とそのDNAのメチル化を評価することで正確な癌の残存の有無、深部断端の評価ができると考えた。 今年度4カ月での研究概要は以下のごとくである。口腔癌および他頭頚部癌(中咽頭癌、下咽頭癌、喉頭癌、喉頭癌)および正常組織においてニトロセルロースメンブレンによる癌細胞採取およびDNA採取を行い十分な細胞とDNAが採取可能かを評価した。口腔癌含む頭頚部癌患者の術前病変部位および切除後検体病変部に Amersham Western Blottingメンブレン(GEヘルスケアジャパン)を10秒以上接着させて癌細胞を採取、その後 1% SDS-PK溶液内に保存し、それぞれDNAを抽出した。全12例でメチル化の評価行うための十分なDNAが採取できた。
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