研究課題/領域番号 |
18K09347
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
井之口 豪 神戸大学, 医学部附属病院, 准教授 (10457046)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 頭頸部癌 / アデノシン代謝 / 免疫治療 |
研究実績の概要 |
頭頸部扁平上皮癌において、細胞外アデノシンは抗腫瘍免疫を抑制する作用を有すると考えられている。CD73はAMPからアデノシンを産生するエクトエンドザイムであり、CD73の高発現は頭頸部扁平上皮癌において予後不良因子と報告されている。CD73は制御性T細胞の細胞表面に発現しており、今回、我々はヒトパピローマウイルス(HPV)陰性の頭頸部扁平上皮癌患者の末梢血ではHPV陽性の患者と比較して、CD73陽性制御性T細胞の比率が高いことを発見した。HPV陰性患者はHPV陽性患者より、化学放射線療法に対する感受性が低く、治療抵抗性である。制御性T細胞の比率が変わらず、CD73陽性制御性T細胞の比率が高いことは、アデノシン代謝の関与する新たな知見と考えられた。またこのCD73は制御性T細胞のみならず、骨髄由来抑制細胞(MDSC)にも発現していることが判明した。腫瘍中と末梢血のMDSCとの比較では、顆粒球系、単球系由来のMDSCともに腫瘍中のMDSCの方がCD73の発現が高く、より腫瘍環境でより活発にアデノシンを産生していることが示唆される結果であった。腫瘍中の糖代謝を2-NBDGの取り込みで測定したところ、CD73陽性細胞はCD73 陰性細胞に比して活発な糖代謝を行っており、腫瘍組織内での代謝による免疫制御の一端が明らかになった。マウスを用いた研究では扁平上皮癌細胞株にはCD73の高発現を認めたが、B16f10などの悪性黒色腫の細胞株ではCD73の発現を認めないことが改めて確認できた。マウスの腫瘍に放射線照射を行うと、一部のMDSCではCD73の発現が上昇することが確認できたが、更に検討を重ねる必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナウイルスの影響で実験が停止している。新規の手術患者の検体採取も停止した。 倫理員会の申請手続きに時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
臨床情報の解析を中心に進める。また過去の病理検体などの活用を行っていく。 新規の検体については、倫理委員会の承認の下、採取を進めていく方針である。 また放射線腫瘍科との共同研究として、Patient-Derived Xenograftマウスの作成にも順次着手していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染に伴う国際学会の中止、実験助手の雇用停止の影響した。 新たな実験助手を雇用する予定。
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