マウス声帯瘢痕モデルをこれまで同様電気メスを用いて作成し、筋線維芽細胞および正常線維芽細胞を分離培養して、αSMAの発現の差異が再現されたのを確認した。ただしマウスの声帯の検体組織がごく少量のため線維化の程度の評価の信頼性を確保するのが難しいと考えられた。そこで検体をより多く採取するために、マウスの頸部全体に放射線を照射し、十分な量の筋を採取して線維化を評価する方が今後の実験系として確証性が高いと考え、従来の声帯瘢痕モデルから頸部放射線照射後モデルに変更し、頸部瘢痕について評価することとした。マウスの頸部に、24Gyもしくは72Gyを単回照射後10日、1か月、3か月経過後に前頸筋を採取し、PCRで評価したところ、各種線維化マーカー(αSMA、TGFb、Collagen I)の発現から、72Gy単回照射後1か月経過したマウスの前頸筋の検体で最も線維化が強いことが判明した。この結果に基づいて、放射線照射1か月後のマウス前頸筋より筋線維芽細胞を分離培養すると、正常線維芽細胞と比較して、照射後の群でαSMAの発現が強くなることを免疫染色で確認し、マウス骨格筋の線維化培養モデルを確立した。今後、PGE2を各種濃度に分けて添加し培養研究を進め、免疫染色、PCR、Western blotting、ELISAなどで、線維化の評価を行っていく予定である。条件調整もある程度進めているが今一歩安定したのを確認して、実際のPGE2の適正濃度による添加実験の本実験を行う予定である。昨年度から続く、研究代表者の業務による遅延に加え、研究代表者の産育児休業のため研究を安定して行うことが難しい期間があった。さらに、研究の進捗は遅れている。
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