実際の頭頸部癌治療においても、高齢者の割合は増加の一歩をたどり、80代さらには90代患者に対する侵襲の少ない治療が求められている。また、内視鏡の進歩から表在癌も多く同定され、その治療も進んできた。多くの表在癌は発育が緩徐で、これまでの浸潤癌とは異なる臨床像を示すことが多い。病理組織検査ではそのmorphologyに差がなく、同一の扁平上皮癌として認識されている。網羅的遺伝子検査でも違いは明らかになっていない。今回我々は主に高齢患者から採取した頭頸部表在癌の生検及び手術検体と一般的な頭頸部浸潤癌において分子発現を解析した。heterogeneityを上皮間葉転換、免疫、シグナル伝達といったそれぞれの遺伝子群に分けた解析を癌組織だけでなく周囲間葉組織で行った。現在、新たながん治療として臨床応用され、大きな成果を上げている免疫チェックポイント阻害剤においては癌周囲組織の免疫寛容機構が大きく関与している。今回は8種類の分子を検討したが、周囲間葉組織の免疫機構の解明は免疫チェックポイント阻害剤使用に対する大きなマーカーとなるだけではなく、相乗効果をきたす新たなターゲット分子の発見につながる。また腫瘍の浸潤能に関与する遺伝子を同定することで、未だ明らかにされていない癌化のメカニズムに踏み込みめた。
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