研究課題
嚥下障害の克服とくに高齢者や脳血管障害含めた多くの嚥下障害患者にとって嚥下惹起障害は致命的な病態である。球麻痺ふくめた運動出力障害は手術やその他代償嚥下法などで摂食機能改善が可能となるのに比べ、感覚障害はそれがどのレベルで生じるにせよ、改善手段がほとんどないのが現状である。その難題に取り組んだ研究が当該研究である。干渉波電気刺激は痛み刺激を伴わず、深部の感覚刺激を可能とする刺激法で、嚥下障害患者への応用が報告されつつある。しかし、理論的基盤がほとんどなく、臨床応用が先行してしまっていることが危惧される。そこで本研究では嚥下惹起障害に干渉波電気刺激が効果的であるかどうかを動物実験モデルで検証した。動物実験用に特別に作製した干渉波電気刺激装置を用い、除脳非動化モデルという嚥下時の「動き」による感覚フィードバックに依存しない、運動出力パターンを解析できるモデルにおいて干渉波電気刺激による嚥下惹起促通効果について検討した。その結果、干渉波電気刺激は咽頭喉頭感覚神経を経由して脳幹に存在する嚥下中枢に情報が伝達され、嚥下惹起性を改善する可能性が示唆された。さらに、嚥下惹起性を改善させる可能性のある薬剤開発に向けた基礎実験として、喉頭感覚フィードバックが嚥下に及ぼす影響について延髄嚥下中枢の活動解析を灌流動物を用いた特殊な実験環境で検討した。このモデルを用いることで、特定の神経作動薬による嚥下中枢への影響をニューロンレベルで検討することが可能となった。さらに薬剤の経口投与における嚥下中枢への影響を検討するために経口注入刺激における嚥下誘発と嚥下中枢機能解析が可能な実験系を確立し、神経作動薬による嚥下惹起性を含む嚥下中枢への影響を解析した。
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Neuroscience Research
巻: 177 ページ: 64-77
10.1016/j.neures.2021.11.006