研究課題/領域番号 |
18K09355
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
西野 宏 自治医科大学, 医学部, 教授 (50245057)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | がん免疫 / CD39 / Foxp3 / 細胞周期 |
研究実績の概要 |
免疫チェックホイント阻害薬を投与してもがん免疫が再活性化されない微小環境が存在する。がん免疫が再活性化されない微小環境をがん細胞と免疫担当細胞の両面から検討を行った。がん細胞においては細胞周期に注目した。すなわち細胞周期が静止期の細胞は放射線および抗がん薬等の薬物に抵抗性を示す。細胞が変性または破壊されないため腫瘍抗原の提示が弱くがん免疫を惹起しにくい。手術検体から分離したがん細胞を検討するとCD44vrichALDH1A1rich細胞がS期の細胞を多く含む。CD44vrichALDH1A1rich細胞はがん幹細胞類似の性質を持っている可能性がある。次にがん組織に浸潤したリンパ球を検討した。浸潤したリンパ球の多くががん細胞を攻撃した形跡がある。なぜならば多くのリンパ球がCD39richを発現した活性化されたリンパ球であったからである。そのリンパ球はFoxp3richを発現しがん細胞を攻撃し疲弊した免疫抑制系のリンパ球であった。同一患者の末梢血よりリンパ球を分離するとCD39richの細胞数は少なく、かつFoxp3richを発現したリンパ球が占める割合は少なかった。全身的ながん免疫は保たれている個体においても、がん細胞そのものががん抗原提示を行わずに宿主がん免疫からがん細胞が回避する場合、がん組織に免疫担当細胞が浸潤しても強力に免疫担当細胞を疲弊させる機序が存在することが明らかとなっった。がん細胞と免疫担当細胞の両面からがん免疫が活性化されない微小環境が存在することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は手術検体より試料を採取し行う。新型コロナウイルス感染蔓延に伴い、通常診療の制限がされた。さらに臨床研究において新たな患者の登録が中止されている。そのため研究施行数を増やせないでいる。
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今後の研究の推進方策 |
がん微小環境に浸潤したリンパ球は疲弊したリンパ球が多いことがわかった。リンパ球の疲弊マーカーであるCD152(CTLA-4)rich、CD279(PD-1)rich、CD366(TIM-3)richなどの単独の解析は盛んに行われているが、多重発現の解析はされていない。多重発現を認めるリンパ球では疲弊度が強く免疫チェックポイント阻害薬を投与してもがん免疫の再活性化は起こらず、投与の効果を認めないと予測する。そこで同様の手法で手術検体よりがん組織中に浸潤したリンパ球を疲弊マーカー発現様式に応じて分離し、同一患者がん細胞と共培養を行う。免疫応答で破壊されたがん細胞より放出されるLDHの測定およびリンパ球のinterferonγのの発現具合を確認する。疲弊度の程度とがん免疫の強度を検討する。生体内のがん微小環境でおきているがん免疫を正確に反映するものと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染蔓延に伴う通常診療制限および研究遂行制限が生じた。本研究は手術検体より試料を採取するため、前述の状況により研究遂行が滞った。そのため使用額が予定より減少した。次年度の研究遂行の抗体試薬購入に当てる予定である。
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