手術切除検体(舌癌、喉頭癌、咽頭癌、上顎洞癌)より癌組織を採取し癌組織に浸潤したリンパ球を分離した。フローサイトを用いてリンパ球の表面抗原を確認 した。手術検体から分離したがん細胞中には一定数のCD44vrichALDH1A1rich細胞が含まれている。先行研究ではこのCD44vrichALDH1A1rich細胞ががん幹細胞の可 能性が示されている。このがん幹細胞の大部分は放射線治療および抗がん薬治療に抵抗性を示す静止期の細胞周期であった。治療による変性が乏しいがん幹細胞 は抗原提示が低く、がん免疫担当細胞から逃避可能となっている。 次にこのCD44vrichALDH1A1rich細胞を多く含むがん組織微小環境のがん免疫について検討し た。このがん微小環境に浸潤したリンパ球の多くががん細胞を攻撃した形跡があった。その理由は多くのリンパ球がCD39richの活性化されたリンパ球であったか らである。そのリンパ球はCD4+CD25+FoxP3+の免疫抑制系のリンパ球であり、がん細胞を攻撃し疲弊したリンパ球であることがわかった。同時に採取した患者の 末梢血中と手術切除検体のがん組織に浸潤したリンパ球のTregについて検討した。患者末梢血 におけるCD4+CD25+FoxP3+細胞の割合は11.8%(1.8~31.5%)であっ た。興味あることに20%以上と5%未満の2つのグループに二極化された。がん組織中に浸潤したリンパ球ではCD4+CD25+FoxP3+リンパ球が平均18.2%であった。がん 幹細胞を多く含むがん微小環境においても免疫担当細胞が活発に働いている可能性が示唆された。
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