研究課題/領域番号 |
18K09358
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
野村 泰之 日本大学, 医学部, 講師 (20297815)
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研究分担者 |
日だい 智明 日本大学, 医学部, 教授 (70228732)
弓削 類 広島大学, 医系科学研究科(保), 教授 (20263676)
村上 正人 日本大学, 医学部, 兼任講師 (60142501)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 線維筋痛症 / オートファジー / necroptosis / 前庭細胞 / 小胞体ストレス |
研究実績の概要 |
今回、論文業績として、内耳培養細胞においてcaspase-8は小胞体ストレス誘導性necroptosisを、apoptosis経路とは別経路で制御することを報告した(Int. J. Mol. Sci. 2019, 20, 5896)。 まず、内耳培養細胞HEI-OC1をツニカマイシン(TM)処理した際にapoptosisのみならずnecroptosisも同時に誘導されることを電子顕微鏡像(TEM)で確認した。その際apoptosis誘導マーカーとして用いたcleaved-caspase-3 の発現増加とnecroptosis誘導マーカーRIPK1の発現低下を認め、分子マーカーの面からも確認した。 またCaspase阻害剤であるzVAD-fmkとTMの同時投与で、cleaved-capspase-3の発現増加、RIPK1の発現低下ともに認めなかった。さらにzVAD-fmkとTMの同時投与で細胞死マーカーAnnexin VとPIの陽性細胞数が増加した。これはlate-apoptosis細胞とnecrosis細胞を示すが、necroptosis細胞増加の可能性も示唆する。 一方Caspase-8はTM処理後に時間依存性に増加した。さらにCaspase-8をsi-RNAによりノックダウンした場合、cleaved-caspase-3の発現は影響を受けず、逆にRIPK1発現が増加した。これはcaspase-8はapoptosis経路ではなくnecroptosis経路をRIPK1を介して制御することを逆説的に示している。 よって小胞体ストレス下の内耳細胞におい、necroptosisはapoptosisのバックアップとして存在し、caspase-8がapoptosis経路と別経路でnecroptosisを制御することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前述したように、小胞体ストレス下の聴覚細胞において、necroptosisはapoptosisのバックアップとして存在し、caspase-8がapoptosis経路とは別の経路でnecroptosisを制御することを確認した。この結果は、臨床的には精神的ストレス状態において、誘導される小胞体ストレスにおける細胞死制御には、necroptosis制御が必要であることを実験的に証明した点で、非常に価値のある結果を得た。 さらに今回、前庭培養細胞UB/UE-1と内耳培養細胞HEI-OC1は、細胞生存率の観点から小胞体ストレス応答が異なる可能性を示唆する極めて興味深い結果を得ている。これらの結果は、蝸牛・前庭症状を有する線維筋痛症in vitroモデルを作成する上で極めて重要な結果である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、昨年度の実験結果を元にして、同じ条件にて、前庭細胞UB/UE-1を処理し、XBP1介在小胞体ストレス誘導性オートファジーによる細胞死・興奮シグナル伝達に関する検討を行う。その同じ培地からエクソソームを単離し、エクソソーム内miRNAのプロファイリングを行い、内耳細胞、前庭細胞の細胞死・興奮に関わる特異的miRNAを抽出する。これらのエクソソームmiRNAを神経初代培養細胞に付加し、かつ低温ストレスをミクログリア細胞(株化細胞BV-2)に連続負荷して、活性化ミクログリア細胞モデルを作製する(11:Ni J. J Neurosci.2015)。このエクソソームmiRNA処理神経初代培養細胞と活性化ミクログリアからmRNAを抽出しRNAseqを行い、蝸牛・前庭症状を伴う線維筋痛症in vitroモデルにおけるバイオマーカーを網羅解析することを目的とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
蝸牛・前庭症状を伴う線維筋痛症in vitroモデルに向けて実験計画は順調に進行しており、前述した如く内耳培養細胞HEI-OC1細胞における小胞体ストレス下の反応経路を確認してきた。そして今後の前庭培養細胞UB/UE-1を用いた実験系に向けて、UB/UE-1の培養状況を確保しつつHEI-OC1細胞の実験系からの移行をおこなっている。HEI-OC1細胞実験系の結果が当初スケジュールよりも早めに得られたので次年度使用が生じたが研究計画自体は順調に推移している。研究使用は、XBP1介在小胞体ストレス誘導性オートファジーによる細胞死・興奮シグナル伝達に関する抗体と、ターゲット分子をノックダウンするためのsiRNA、エクソソーム抽出キットと受託サービス、miRNAのプロファイリング、RNAseq解析に使用する予定である。
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