研究課題/領域番号 |
18K09361
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
家根 旦有 近畿大学, 医学部附属病院, 教授 (40220199)
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研究分担者 |
西尾 和人 近畿大学, 医学部, 教授 (10208134)
坂井 和子 近畿大学, 医学部, 講師 (20580559)
藤井 正人 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), その他部局等, 研究員 (70129633)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 中咽頭癌 / HPV / 低侵襲治療 |
研究実績の概要 |
HPV関連中咽頭癌に対するリスク評価に基づいた低侵襲治療を開発する目的で、「中咽頭扁平上皮がんに対する集学的治療の効果とヒト乳頭腫ウイルス感染との相関に関するバイオマーカー研究:UMIN 000021572」のプロトコールを作成し、倫理委員会の承認後、頭頸部癌基礎研究会の会員に多施設共同研究の参加を募った。その結果、14施設(近大奈良、東京医療センター、神戸大、北海道大、佐賀大、京都大、九州大、東海大、市立三次中央、奈良医大、金沢医大、藤田保健衛生大、高知大、岐阜大)から中咽頭癌のサンプルを回収し、近畿大学医学部ゲノム生物学教室でゲノム解析を行った。 採取されたサンプルから遺伝子解析が可能であった症例は80例であった。HPV検査として、PCRによるHPV-DNA検査、ハイブリッドキャプチャーII法、p16免疫染色法のいずれかに陽性であった症例をHPV陽性とみなした。その結果HPV陽性は56例(70%)、HPV陰性は24例(30%)であった。HPVのgenotypeはHPV16型48例(87.5%)、HPV35型3例(5.4%)、HPV58型2例(3.6%)、HPV31型1例(1.8%)、HPV33型1例(1.8%)であった。 ゲノム解析の方法は次世代シーケンサーであるIonProtonシステムを用い、体細胞遺伝子の解析にはIon AmpliSeq Cancer Hotspot Panel v2を用いて行なった。遺伝子解析の結果は、HPV陽性ではPIK3CAの遺伝子変異が最も多く、56 例中12例(21.4%)、次いでFGFR3 5例(8.9%)、PTEN 4例(7.1%)であった。HPV陰性では24例中p5311例(45.8%)、次いでPIK3CA 2例(8.3%)であった。飲酒・喫煙歴の無い症例は9例で、全例がHPV陽性でPIK3CA変異は3例(33.3%)であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
頭頸部癌基礎研究会の多施設共同研究に参加を募り14施設の参加を得たことは十分な成果であった。本研究の基礎となる臨床研究は、2014年5月から2016年3月の期間に研究者分担者の藤井正人が行った「中咽頭扁平上皮癌に対する集学的治療とHPV感染に関する臨床研究」に付随するものであり、その研究には全国18施設が参加し、92例のサンプルが集められた。その内、14施設が本研究に参加し、解析可能な80例のサンプルが供与されたことは大きな成果であった。収集されたサンプルは既に研究者分担者である藤井正人の研究施設で各種のHPV検査が行われており、HPVの陽性の判定が確定されている。また凍結組織検体から抽出されたDNAは東京医療センターで厳密な管理の下で保管されており、そのDNAの質は確認されていた。その質の高いDNAを近畿大学ゲノム生物学研究室に移送し、遺伝子解析が行うことができたことは、本研究の予定通りの進捗状況であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度の研究内容は当初の研究目標である中咽頭癌の遺伝子解析であり、HPV陽性中咽頭癌とHPV陰性中咽頭癌の遺伝子解析を行いその差を比較検討するものである。今回の研究で用いた遺伝子解析の方法は、次世代シーケンサーのIonProtonシステムを用い、Ion AmpliSeq Cancer Hotspot Panel v2を用いた方法で、廉価版であることから解析できる遺伝子の個数は50遺伝子、2,790ヶ所の変異に限定される。さらに網羅的な遺伝子解析を行うには検索遺伝子の個数が4倍以上のパネルを用いることが必要となるが、高価であるため症例を絞っての解析となる。今回の遺伝子解析の結果から、HPV陽性中咽頭癌とHPV陰性中咽頭癌のそれぞれで特徴的な遺伝子変異を認めた症例はさらに詳細な遺伝子解析を行う必要があると思われる。特にHPV陽性中咽頭癌でのPIK3CA遺伝子変異症例、 HPV陰性中咽頭癌におけるp53遺伝子変異症例はさらに詳細な遺伝子解析を行う必要があると考えている。また対象症例の予後を調査し、本来は予後が良好と考えられているHPV陽性中咽頭癌の予後不良例、反対にHPV陰性中咽頭癌の予後良好例の遺伝子背景を検索することは、中咽頭癌に対する低侵襲治療開発の礎になるものと考えている。 今年度以降は登録症例の予後を詳細に分析し、その予後に影響する遺伝子を明らかにすることが重要と考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
関連試薬の購入が予定より少なく次年度使用額が生じたが、次年度に購入を予定している。
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