研究実績の概要 |
咽喉頭異常感・嗄声・喉頭肉芽腫・喉頭痙攣・奇異性声帯運動・慢性咳嗽などの症状の一部には, 咽喉頭への酸逆流(LPR)に起因するものがあると指摘されている. しかし, PPI抵抗例も少なくなく, LPRの計測ができなかったため, その正確な診断は困難であり, LPRの解明は停滞していた. 本研究は, 咽喉頭逆流症 (LPRD)の病態解明を行うことを目的に行うものである. 臨床試験の対象は,原因不明とされた咽喉頭症状(咽喉頭異常感・嗄声・喉頭肉芽腫・喉頭痙攣・奇異性声帯運動(PVFMD)・慢性咳嗽など)を主訴に千葉大学耳鼻咽喉科を受診された方で,本試験を説明し,同意していただいた方とし,近年開発されLPRの測定を可能とした「24時間下咽頭インピーダンス検査(HMII)」を用い, 正確なLPRD診断を行う.同時に喉頭所見・食道所見・食道内圧所見・唾液中ペプシン値・症状スコアを採取する.LPRDと診断され希望があった場合は逆流防止手術を行い,治療効果を観察する.LPRD群と非LPRD群を比較検討し,その特性, 症状, 他覚的所見, 唾液中ペプシン値, 噴門形成術治療成績から, 本邦におけるLPRDを検討するものである.2020年度は新型コロナウイルスの影響で,本研究を対象とする悪性疾患ではなく緊急性を要さないLPRDの受診が極端に減少した.また,流行期では食道内圧検査やHMIIなどの検査は病院側より延期を求められた.以上により,実臨床においては進歩状況は遅れている.また,臨床研究に並行して、基礎研究を開始する予定であったが,これも実験する場所が遠方であることから停滞している。今後はLPR動物モデルを作成し,反回神経・上喉頭神経・横隔神経・舌下神経を同定し,双極銀電極を留置する.安静 時・刺激時・発声時の上記神経活動をモニターしLPRによる異常喉頭運動の存在を検討する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度は新型コロナウイルスの影響で,本研究を対象とする悪性疾患ではなく緊急性を要さないLPRDの受診が極端に減少した.また,流行期では食道内圧検査やHMIIなどの検査は病院側より延期を求められた.以上により,実臨床においては進歩状況は遅れている.以上により,研究期間を1年延期させていただいた.
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス対策として検査側はN95マスク,防護メガネの着用を徹底しており,今後のHMIIや食道内圧検査は可能となっており,症例数の蓄積を行っていく.また,逆流防止術に関しても施行可能となったため,手術治療効果の検討も再開している.研究機関を1年延長させていただいたことで予定症例数を補完する事が可能であると思われる.
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