研究課題/領域番号 |
18K09368
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
米倉 修二 千葉大学, 医学部附属病院, 講師 (20400939)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ヒノキ花粉症 / スギ花粉症 / 舌下免疫療法 |
研究実績の概要 |
本研究ではスギ花粉症に対する舌下免疫療法が一般診療として開始された2014年以降に治療を開始した症例を対象とした。当科で2014年に治療を開始した症例は30例であったが、そのうち5例は近医への転院を希望し、1例は治療脱落例であった。まずはスギ花粉症の効果について検討するために行ったアンケート調査をまとめた。スギ花粉飛散数は2015年(1年目)は2911個、2016年(2年目)は3304個、2017年(3年目)は1827個であった。舌下免疫療法の効果については、効果ありが1年目では66.7%、2年目では83.3%、3年目では100%であった。治療の満足度は1年目では66.7%、2年目では79.2%、3年目では91.7%が満足と回答していた。 鼻炎治療薬の使用状況は、使用なしの割合をみると1年目は23.3%、2年目は54.2%、3年目は58.3%であった。アンケートの結果をまとめると、花粉飛散用量の違いがあり客観的な知見とは言い難いが、概ね治療年数を重ねることで効果は増強していることが示唆された。スギ花粉特異的IgE抗体価の変動を見てみると、治療開始後に速やかに抗体価は上昇した。その後の変化は、各年の花粉飛散期後の上昇はある程度抑えらえており、年々低下している傾向にあった。現在ヒノキ花粉特異的抗体についても測定しており、その変動を検証している。2018年度及び2019年度は各年の花粉飛散期前後の採血から抽出した末梢血単核球をスギ花粉抗原で刺激し、Th2サイトカイン産生細胞、制御性T細胞、病原性Th2細胞の検討を行ったところ、治療効果が比較的明らかに認められた症例ではTh2サイトカイン産生細胞の増加抑制、制御性T細胞の誘導、病原性Th2細胞の増加抑制が認められた。現在末梢血単核球をヒノキ抗原で刺激し、検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スギ花粉症患者の採血方から抽出した末梢血単核球をスギ花粉抗原で刺激した際の免疫学的反応はこれまでにも経験があったが、ヒノキ花粉抗原刺激に関しては新たな試みであり、validationに時間を要していたが、現在ヒノキ主要抗原に対する免疫学的反応について検討を進めている。ただし、2020年初旬は新型コロナ肺炎の影響で実験が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
1.ヒノキ花粉特異的抗体の測定:保存血清を用いて、ヒノキ花粉特異的IgEおよびIgG4を測定する。 2.ヒノキ花粉特異的Th2サイトカイン産生細胞および制御性T細胞:末梢血単核球(PBMC:Peripheral Blood Mononuclear Cells)から、ヒノキ花粉特異的Th2細 胞(IL-4、IL-5、IL-13産生Th2細胞)はELISA法あるいはELISPOT法を、制御性T細胞はFACSを用いて検討を行 う。 3.Pathogenic Th2細胞の検討:PBMC中のCD4+ T 細胞におけるST2 の発現と機能を検討する.IL-33 とヒノキ花粉の主要アレルゲンであるCha o 1 とCha o 2 を 混合した試薬の有無で8日間培養したPBMC を用いてフローサイトメトリーによる表面抗原の検討、細胞内染色によりサイトカイン産生の検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
スギ花粉症患者の採血方から抽出した末梢血単核球をスギ花粉抗原で刺激した際の免疫学的反応はこれまでにも経験があったが、ヒノキ花粉抗原刺激に関しては新たな試みであり、validationに時間を要した。本格的な実験開始できなかったため、次年度の使用額を増やして実験を進める予定である。また新型コロナ肺炎の影響で実験が遅れている。
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