本研究ではスギ花粉症に対する舌下免疫療法(SLIT)が一般診療として開始された2014年以降に治療を開始した症例を対象とした。当科で2014年に治療を開始した症例は30例であったが、そのうち5例は近医への転院を希望し、1例は治療脱落例であった。まずはスギ花粉症の効果について検討するために行ったアンケート調査をまとめた。スギ花粉飛散数は2015年(1年目)は2911個、2016年(2年目)は3304個、2017年(3年目)は1827個であった。舌下免疫療法の効果については、効果ありが1年目では66.7%、2年目では83.3%、3年目では100%であった。治療の満足度は1年目では66.7%、2年目では79.2%、3年目では91.7%が満足と回答していた。鼻炎治療薬の使用状況は、使用なしの割合をみると1年目は23.3%、2年目は54.2%、3年目は58.3%であった。アンケートの結果をまとめると、花粉飛散用量の違いがあり客観的な知見とは言い難いが、概ね治療年数を重ねることで効果は増強していることが示唆された。 SLITを施行していない薬物療法の症例と比較すると、スギ花粉飛散期およびヒノキ花粉飛散期において、いずれもSLITを施行した群の方が症状薬物スコアは低値を示していた。スギ花粉エキスを用いたSLITはスギ花粉症のみならず、ヒノキ花粉症にも一定の効果があることが示唆された。花粉飛散期前後の採血から抽出した末梢血単核球をスギ花粉抗原で刺激し2型サイトカイン産生量の比較を行うと、薬物療法群に比較してSLIT群では有意にサイトカイン産生量の上昇を抑制していた。同様にヒノキ花粉抗原で刺激した場合でも2型サイトカインの抑制を認めたが、スギ花粉刺激時より抑制の程度は少なかった。スギ花粉とヒノキ花粉は共通抗原をもつが、Cha 0 3などヒノキ花粉特有の抗原の影響が示唆された結果であった。
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