研究実績の概要 |
前年まで、PPPDの平衡機能検査所見や心理状態、自覚症状の問診票などの結果について検討し、その結果、CP%はやや高値、回転検査やvHITのVOR gainは正常、VEMPは正常であった。PPPDでは姿勢制御の視覚依存、体性感覚依存が亢進していると考えられるが、重心動揺検査のラバーロンベルグ率、閉眼ラバー比は正常であった。検査感度が不十分であるためと考えられる。HADSはやや高値であるが、他の慢性めまいと差があるほどではなく、DHIはめまい症と比べ、高値であった。すなわち、PPPDでは重篤感が高い疾患であるにもかかわらず、特異的な検査所見は得られない結果であった。 そこで、今期はPPPDに特異性の高い検査が無いかどうか検討した。PPPDでは視覚刺激や体動で前庭症状が誘発されることから、体平衡維持に関わる感覚系の感覚過敏が存在する可能性が考えられる。自覚的視性垂直位(SVV)は重力方向の知覚に関する指標であるが、頭部を傾斜してSVVを測定する頭部傾斜SVV検査(head-roll tilt SVV, HT-SVV)は通常のSVV検査より感度が高いことが知られている。頭部傾斜時のSVVと実際の頭部傾斜角(head tilt angle, HTA)から求めた頭部傾斜感覚ゲイン(head tilt perception gain, HTPG)はPPPDでは代償不全あるいは心因性めまいに比べ有意に大きいことが判明し、HTPG>1.202ではPPPD診断の特異度は95.2%であった(Yagi et al. Otol Neurotol in press)。PPPDはめまいの誘発要因を主体とする詳細な問診から診断されてきたが、HTPGがPPPD診断の客観的な指標になることが期待される。
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