研究課題/領域番号 |
18K09373
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
坂下 雅文 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 講師 (40555455)
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研究分担者 |
高林 哲司 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 講師 (70397272)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 好酸球性副鼻腔炎 / アラキドン酸代謝 / 15-LO |
研究実績の概要 |
好酸球性副鼻腔炎(ECRS)は成人発症の気管支喘息を高率に合併する難治性疾患である。長期にステロイドの内服が必要になる例が多く、炎症遷延化機序は明らかになっていない。鼻ポリープで生じている好酸球性炎症の遷延化には脂質代謝、特にアラキドン酸代謝が重要と考えられるがまだ十分に研究されていない。 本研究の目的であるECRSの炎症病態を解明のために、①ECRSと非ECRSの鼻ポリープにおいてアラキドン酸をもつリン脂質発現測定系での比較検討、②アラキドン酸代謝系の代謝酵素発現比較、③炎症が局所性か全身性かの比較目的に血中の脂質と代謝酵素発現を解析することを計画した。 今年度行ったことは上記②である。シクロオキシゲナーゼ(COX)経路、リポキシゲナーゼ(LOX)経路、シトクロムP450代謝経路の酵素のメッセンジャーRNA発現をリアルタイムPCRにて測定した。解析対象の代謝酵素は、phospholipase A2(PLA2)、 5-lypoxygenase (5-LO)、 15-lypoxygenase (15-LO)、prostaglandin D synthase (PGDS)、 PGES、 PGIS、 PGFS、thromboxane synthase (TXS)、 leukotriene A4(LTA4) hydrolase、 LTC4 synthase (LTCS)、 LTBS、cycloxygenase-1 (COX1)、 COX2であり、その結果15-LO経路の代謝酵素の亢進が認められた。このことは前年度に示した、ECRSの鼻ポリープではアラキドン酸を含むリン脂質のホスファチジルコリンXが優位に低かったことから、ECRSの鼻ポリープではアラキドン酸代謝が亢進しており、アラキドン酸を含むリン脂質が消費されていることに矛盾しないことと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
患者検体の収集が順調であったため、予定の実験を行うことができた。しかし、2020年は新型コロナウイルス感染症の影響で鼻手術を全国的に行わないこととなっており、その解除状況次第によっては検体の収集が十分に行えない可能性がある。過去の検体で補うことが可能かを検討しながら進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
被験者の採血、鼻組織を用いて検体中の脂質と代謝酵素を液体クロマトグラフィー質量分析法(Liquid Chromatography/Mass Spectrometry :LC/MS/MS)を用いて測定する。解析対象は、アラキドン酸カスケード中の代謝産物(tetranor-PGFM/PGEM/PGDM、 20-hydroxyPGF2a/PGE2、 18-carboxy-dinor-LTB4、 13、14-dihydro-15-keto-tetranor-PGF1b、 TXB2、14,15-LTC4、 LTD4、 LTC4、 LTE4、 LTF4、 LTB4、 19-HETE、 20-HETE、 18-HETE、 17-HETE、 8-HETE、arachidonic acid)の他に、脂質メディエーター関連物質において、リノール酸関連物質(12,13-DiHOME, 13-HODE, 9-HODE)、血小板活性化因子関連物質(Lyso-PAF、 PAF、 Azelaoyl-PAF)、リノレン酸関連物質(9-HOTrE、 13-HOTrE)、エイコサペンタエン酸(8-iso-PGF3a、TXB3、 PGF3a、 PGE3、 PGD3、 LXA5、 17, 18-DiHETE、 18-HEPE、 15-HEPE、 12-HEPE、 5-HEPE、EPA)、ドコサヘキサエン酸(Resolvin、 Maresin1、 10, 17-DiHDoHE、 20-HDoHE、 116-HDoHE、DHA)を測定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画より経費が節約できたため、次年度に繰り越し、研究の遂行に充てる。
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