当科で遺伝学的検査を行なった人工内耳症例87例のうち、22例で原因と考えられる遺伝子変異が同定され確定診断することが可能であった。遺伝子診断の確定診断率は約25%であった。63遺伝子の網羅的解析までなされた症例に限定すると60例中22例で確定診断された(36.7%)。同定された遺伝子変異の内訳はSLC26A4遺伝子変異が6例、次いでCDH23遺伝子変異が4例、GJB2遺伝子変異が3例、ミトコンドリアm.1555A>G変異、MYO15A遺伝子変異、OTOF遺伝子変異がそれぞれ2例、LOXHD1遺伝子変異、KCNQ4遺伝子変異、POU4F3遺伝子変異がそれぞれ1例であった。 CI患者60例においては15例で原因遺伝子変異が同定され、EAS患者27例においては4例で同定された。それぞれ確定診断率はCI患者では25%、EAS患者では15%であった。また、その内訳としては、CI症例ではSLC26A4遺伝子変異が6例、次いでCDH23遺伝子変異、GJB2遺伝子変異が3例ずつ、MYO15A遺伝子変異が2例、OTOF遺伝子変異、LOXHD1遺伝子変異、KCNQ4遺伝子変異、POU4F3遺伝子変異がそれぞれ1例ずつであり、EAS症例ではミトコンドリアm.1555A>G変異が2例、CDH23遺伝子変異が1例、OTOF遺伝子変異が1例だった。 言語習得前後発症群で比較すると、言語習得前発症群では34例中18例で原因遺伝子変異を同定した(同定率53%)のに対し、言語習得後発症群では53例中4例(8%)と確定診断率が低かった。
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