プロサポシンの先天性異常は蝸牛の形態異常を伴う著しい難聴を引き起こすことが報告されている一方,神経栄養因子プロサポシンに対する受容体であるGPR37ならびにGPR37L1の同定は最近であるため,蝸牛におけるそれらの発現性は未だ検討がなされていない。そのため、蝸牛の恒常性維持に対するプロサポシンの機能的役割が不明である。 GPR37およびGPR37L1はプロサポシンの受容体であるという報告がなされている一方、アデノシンA2A受容体ならびにD2ドーパミン受容体と結合しそれらの発現性を制御する受容体である可能性が報告されている。そのため本年度は、プロサポシンとその受容体であるGPR37およびGPR37L1の関係性をより明らかにするために、膵島におけるこれら分子の発現性について検討した。免疫組織学的染色により、膵島のほぼ全ての細胞が抗プロサポシン抗体、抗GPR37抗体および抗GPR37L1抗体に陽性を示し、抗グルカゴン抗体陽性を示すα細胞、抗インスリン抗体陽性を示すβ細胞、抗ソマトスタチン抗体陽性を示すδ細胞の全てにおいて、プロサポシン、GPR37およびGPR37L1の発現性が確認された。一方、膵島におけるアデノシンA2A受容体発現性は非常に弱く、ごく少数の抗GPR37抗体陽性細胞ならびに抗GPR37L1抗体陽性細胞にD2ドーパミン受容体の発現性が観察された。以上より、膵島では広く内分泌細胞にプロサポシン、GPR37およびGPR37L1発現しており、GPR37およびGPR37L1はアデノシンA2A受容体ならびにD2ドーパミン受容体の発現調整のためよりは、傍分泌されているプロサポシンの受容のために発現している事が示唆された。この知見より、内耳においてもGPR37およびGPR37L1はプロサポシンを受容するために発現している可能性が高いと思われた。
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