本研究の目的は、メニエール病の治療薬の内リンパ水腫軽減効果をin vivoでOCTを用いて観察し、薬理効果とその発現様式を解明することにより、治療薬の効果判定に役立てることである。学術的独自性と創造性については、方法論としては内耳におけるOCT研究は我々の報告を含め僅かに認めるのみである。さらに、OCTを用いてin vivoで内リンパ水腫の変化を観察し、その程度を評価した報告は無い。これらが本研究の特色であり、独創的な点である。 実験1:モルモットを深麻酔下に後頭開頭、内リンパ嚢を露出後、内リンパ嚢を電気凝固し、内リンパ嚢閉塞術を行う。その後、4週間飼育し、内リンパ水腫モルモットを作成する。この内リンパ水腫モルモットを深麻酔下に頭部固定器に固定し、腹側アプローチにて中耳骨胞を開放し蝸牛を露出させる。その後に、メニエール病の治療薬であるイソソルビドを中耳骨胞内に投与し、内リンパ腔の増加率の計測を行った。イソソルビドの濃度は経口投与と同様の70%とし、投与時間は5分その後除去し、10分間蝸牛内部構造を観察するものである。内リンパ腔の増加率はイソソルビド投与前は内リンパ水腫動物では75.6±17.8%(n=5)、イソソルビド投与後は42.1±2.1%であった。正常動物ではイソソルビド投与前は21.1±6.0%(n=3)、イソソルビド投与後は0.0±-0.1%であった。内リンパ水腫動物、正常動物いずれにおいてもイソソルビド投与後に有意(t検定、P<0.01)に内リン パ腔が縮小していた。 実験2:イソソルビドの濃度を5ポイントずつ50~70%に変えて同様の実験を行った。正常動物では50%より内リンパ腔の有意な縮小を認めた。内リンパ水腫動物においては60%から有意な縮小を認めた。これらの容積減少は濃度依存性に認められた。今回の結果からイソソルビドの鼓室内投与による治療効果が認められた。
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