研究課題/領域番号 |
18K09385
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
春名 眞一 獨協医科大学, 医学部, 教授 (60198934)
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研究分担者 |
金谷 洋明 獨協医科大学, 医学部, 講師 (40265301)
柏木 隆志 獨協医科大学, 医学部, 助教 (50622982)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 嗅粘膜 / ボーマン腺 / 組織障害 / 分泌 |
研究実績の概要 |
1.好酸球性副鼻腔炎(ECRS)の前・後副鼻腔粘膜及び嗅粘膜における好酸球浸潤とFeNOとの関係について評価した。 副鼻腔粘膜と同時に採取した嗅粘膜との好酸球浸潤に有意な相関が認められ、ECRSでは嗅粘膜にも高度の好酸球浸潤しており、かつ組織学的所見で呼吸粘膜同様に嗅粘膜にも粘膜障害が観察された。したがって、ECRSの嗅覚障害で、呼吸性嗅覚障害のみでなく嗅粘膜性嗅覚障害も呈していることが示唆された。また同時に測定したT&Tオルファクトメトリーによる嗅覚検査での嗅覚機能では非好酸球性副鼻腔炎(nonECRS)患者に比べて、高度な嗅覚障害を呈し、臨床的にもECRSでは呼吸性嗅覚障害のみでなく嗅粘膜障害が強いことが推測された(Kashiwagi T, Tsunemi Y, Akutsu M, Nakajima I, Haruna S. Postoperative evaluation of olfactory dysfunction in eosinophilic chronic sinusitis-comparison of histopathological and clinical findings. Acta Otolaryngol 2019;139:881-889.)。さらに同時に測定したFeNO値はECRSでは当然高値を示したが、組織学的嗅粘膜障害の程度と明らかな相関は認めなかった。
2.ECRSでの嗅粘膜のボーマン腺からの分泌過多および糖蛋白の変化を評価した。 手術で採取した呼吸粘膜と嗅粘膜の腺組織の組織学的検討すると、両者ともに腺組織の増加が認められた。またAB-PAS染色では、前者は粘液腺と漿液腺組織の混在であったが、ボーマン腺では漿液腺であることが認められた。両者ともに粘膜上皮の線毛機能に関与すると考えられているが、その機能の差が推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
手術で採取する嗅粘膜は非常に小さい組織であり、組織学的に粘膜上皮の形態を十分に保っていないものが多く、十分な組織材料が確保できにくい状況による。そのため、多くの分泌マーカーや窒素化ストレスのマーカーであるニトロチロシンやステロイド抵抗因子についてAmphiregulinの染色が遅れることになっている。 さらに、新型コロナ感染症による鼻内視鏡手術自体による医師の感染の危険性があり、手術を延期しており、そのために手術組織材料が集まりにくくなっている。
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今後の研究の推進方策 |
1.副鼻腔粘膜と嗅粘膜で窒素化ストレスのマーカーであるニトロチロシン(3-NT)の発現や、ボーマン腺の腺組織の分泌過多および糖蛋白の変化を種々のムチン抗体を使い、嗅線毛の機能異常を組織的に証明する。また、嗅粘膜上でのステロイド抵抗因子についてAmphiregulinの存在と窒素化ストレスとの関係を検討する。 2.嗅粘膜細胞培養上で、単離末梢好酸球を添付し糖蛋白分布とNO合成能の変化を把握し、嗅粘膜の修復能力を検討する。 以上の結果からECRSでは、呼気ガス状メディエーターにより好酸球炎症が惹起され、鼻副鼻腔粘膜とともに嗅粘膜上で糖蛋白の分泌異常が生じ、細胞表面における嗅線毛の機能異常を引き起こし、ニオイ分子の嗅粘膜接着を妨害することが嗅覚障害の一因であることを証明する。また粘液分泌異常の改善に有効なステロイド薬の使用による嗅粘膜分泌過多の不耐例の存在も示され、呼吸粘膜と嗅粘膜機能障害の差異を推測する。
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次年度使用額が生じた理由 |
手術延期により手術組織組織材料が集まりにくくなっていることから、試薬代17,807円の残額が生じるが、次年度の染色試薬の購入に使用したい。
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