研究課題/領域番号 |
18K09388
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
春山 琢男 順天堂大学, 医学部, 准教授 (80549270)
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研究分担者 |
古川 正幸 順天堂大学, 医学部, 先任准教授 (20359524)
楠 威志 順天堂大学, 医学部, 教授 (30248025)
池田 勝久 順天堂大学, 医学部, 教授 (70159614)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | Th17細胞 / 骨破壊 / 真珠腫性中耳炎 / 表皮細胞 / 線維芽細胞 |
研究実績の概要 |
Th17細胞の活性化を介した骨破壊は、慢性関節リウマチにみられる現象であるが、申請者らは、真珠腫性中耳炎においても同じTh17細胞を介した骨破壊が発生していることを発見した。この結果から「IL-17により惹起される骨破壊」という新しい機序の可能性が導き出された。そこで本研究ではその分子病態を解明するために、真珠腫の骨破壊機序に重要なサイトカイン・キモカインの産生母地である構成細胞(表皮細胞と線維芽細胞)を分離・純化培養し、in-vitroでの培養実験系を構築する。真珠腫の骨破壊に関連する特異的遺伝子の発現解析に基づく遺伝子ネットワークプロファイルを決定する。本プロファイル結果を基盤に、真珠腫の新規治療戦略に役立てる。中耳真珠腫の発症は全国で年間3,500-4,000症例と推察されている。現在、真珠腫性中耳炎の治療の中心は手術であるが、本研究の成果によって新規の薬物治療を併用することによって骨破壊を未然に防ぎ、顔面神経麻痺、めまい、難聴、髄膜炎などの重篤な合併症を回避させることは、患者救済に著しく貢献する。この課題に対して、真珠腫性中耳炎の骨破壊の免疫学的分子機構の分子レベルで解明し、治療戦略に新たな分子基盤を提供することができることが本研究の独創的かつ高い学術的特色である。既に、リウマチにおいてはTNF-α阻害により患者の関節炎抑制とともに骨破壊が抑制されることが報告されてきている。今回の研究によって、真珠腫の骨破壊に関するターゲット遺伝子を解明することによって新規の創薬の開発に結び付き、手術を回避して保存的な治療が可能となり、臨床的に極めて意義深い研究となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では真珠腫の骨破壊機序に重要なサイトカイン・キモカインの産生母地である構成細胞(表皮細胞と線維芽細胞)を用いて、短期間で解析できる分離培養系を確立することにより、個々の患者の生体組織に近いin vitro評価系を確立することを目的とした。既に、我々の先行研究(Homma et al., Act Otolaryngol 2014; Shiozawa at al., Rhinology 2015)においては、鼻ポリープ組織より簡便に上皮細胞と線維芽細胞の検体分離、培養に成功し、同細胞が凍結保存により生体機能を保存した状態で実験を行えることを確認している。この実験技術を真珠腫組織培養に応用する。摘出された真珠腫から表皮細胞と線維芽細胞を分離し、各々を純化培養する。培養された表皮細胞と線維芽細胞の真珠腫に特異的な生物学的な特性を確認するために、IL-17を添加して表皮細胞から分泌されるフィラグリン量と線維芽細胞から分泌されるRANKL量を測定した。以上から、真珠腫を用いたin-vitroでの培養実験系を構築した。手術時採取した上皮下肉芽組織を含む真珠腫組織を細切し、摘出検体の酵素処理 Ca free MEMをバッファーとし、MEM with DNAase and proteaseを用いた酵素処理時間・濃度による最適条件の検討を行った。細胞の抽出:酵素処理後の検体を撹拌し遠心(1000rpm×5min)し、上清を抽出後再び遠心(1000rpm×5min)し上清を吸引しMEMを加えた。表皮細胞と線維芽細胞の培養:培地としてFBS/DMEMに表皮細胞と線維芽細胞を細胞特異的な成長因子を用いて純化培養を行い、培地濃度、検体濃度及び培養期間の検討を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後は真珠腫から培養された上皮細胞と線維芽細胞の培養系を確立構成細胞系では上皮細胞と線維芽細胞に分離し、各々を純化培養する。IL-17を培養系に非添加または添加し、細胞から核酸分子を抽出し、デジタルオミックスアナライザーによってPCR増幅なしに、800以上の炎症性・免疫性の関連遺伝子の挙動を短時間で正確かつ再現性をもってマルチプレックス解析して、多数の遺伝子が連動して複雑なネットワークを形成している遺伝子発現のプロファイルを作成する。IL-17非添加群と添加群から得られた遺伝子発現のプロファイルを遺伝子発現変異分析法によって解析し、関連する特異的遺伝子の発現プロファイルを決定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
シミュレーション結果のデータ整理として謝金を計上していたが,今年度は大規模計算を行う回数が少なかったため,研究代表者自身で行った。そのため謝金は0となった。また,英語論文についての校正費は今年度末までに投稿準備が完了しなかったため計上しなかった。次年度、高解像度数値シミュレーションの実行のための大型計算機使用料,その実行補助および資料整理補助としての謝金を計上する。また,現在準備中の英語論文の英文校正費に支出予定である。国内外の学会参加費も支出予定である。
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