研究課題/領域番号 |
18K09392
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研究機関 | 地方独立行政法人神戸市民病院機構神戸市立医療センター中央市民病院(第1診療部、第2診療部、第3診療部 |
研究代表者 |
内藤 泰 地方独立行政法人神戸市民病院機構神戸市立医療センター中央市民病院(第1診療部、第2診療部、第3診療部, 中央市民病院, 副院長 (70217628)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 高度難聴 / 高齢 / 認知機能 / 脳代謝 |
研究実績の概要 |
本年度は高度難聴67耳において人工内耳手術を行い、その言語機能の改善を評価した。この内最高齢患者は83歳であったが、術後、語音聴取が順調に改善している。また、高度難聴者の認知機能に関する最新の研究報告を調査した。Panouilleresら(2018)は大脳の舌運動に関与する領野の時期刺激を用いて加齢性難聴を有する高齢者で聴覚-音声表出機能が低下していることを於きらかにしている。Volterら(2019)は成人高度難聴者に対する人工内耳手術が語音聴取やQOLだけでなく神経認知機能改善をもたらすことを明らかにしている。認知機能検査のうち0および2バック課題で、術後6カ月で有意の改善が得られたとしている。かれらの研究結果は本研究の課題設定に有用であるとともに、彼らの研究対象が50誌以上の成人とされているため、本研究で高齢の患者を対象をすることでより年齢特異的な人工内耳の効果を明らかにできると考えられる。さらに、両側の人工内耳の効果については人工内耳電極を用いた術中ABR(EABR)計測の結果を評価し、先行する人工内耳のもたらす影響が吻側脳幹聴覚路の可塑性を低下させる可能性を見出しOtology-Neurotology誌に発表した(Kishimoto, Yamazaki, Naito, et al. Otol Neurotol. 2019 Apr;40(4):e364-e372. doi: 10.1097/MAO.0000000000002130.First Implant-Induced Changes in Rostral Brainstem Impair Second Implant Outcomes in Sequential Bilateral Cochlear Implant Children With Long Inter-Implant Delay.)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では研究目的に沿った高齢者の認知機能評価を行う必要があり、今年度はその情報収集を行った。認知機能検査そのものは多種、かようなものが入手されるが、本研究では脳機能計測中の課題負荷に使用できることが必要であり、当初の想定より難易度が低く、対象となる高齢者すべてで実施でき、かつ人工内耳手術前後の変化が評価可能な設定を検討するために時間を要した。その結果として、n-バック課題でnを1あるいは2で予備実験を行うこととしている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の進捗を加速するために研究を主業務とする医師をスタッフとして当科に招聘、着任させる予定である。この体制強化により想定より若干遅れている研究実施を加速し、2019年度中に予定通りの研究進捗に到達させる。設定した認知課題(n-バック課題)を年齢相応の聴力を有する高齢者と、高度難聴を有する高齢者で実施し、まず、高齢者に於ける高度難聴の認知機能に及ぼす影響を定量的に評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究に使用する認知機能検査の設定に時間を要し、実際の計測および刺激プログラム作成を次年度に行うことに変更したことにより、これに伴う支出も次年度に使用することとなったため。
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