研究課題
人工内耳適応基準を満たす高度難聴(両側90dB以上、あるいは両側70dB以上かつ最高語音明瞭度50%以下)の高齢者(65歳以上、85歳未満)の脳代謝をFDG-PETを用いて計測し、高度難聴の脳機能に及ぼす影響と、人工内耳による聴覚補償の効果を検討した。今回の研究対象となる高齢高度難聴者は、上記の人工内耳適応基準を満たし、人工内耳植え込み術を受け、術後1年以上経過したものとした。被験者は激しい運動を避けて4時間以上絶食し、調光調音を含む安静状態で18F-FDG(185MBq)を静脈注射してそのまま安静を保った後に、PETスキャナ(Discovery PET/CT 690 Elite Motion Vision, GE Healthcare)を使用して、減弱補正用のX線CTに続き、18F-FDG投与30分後から30分間、局所脳代謝を計測した。各々の被検者のFDG-PETデータは、当院分子イメージング研究センターが所有する健常者平均データと3D-SSP法を用いて比較した。人工内耳を使用していない高度難聴高齢者では側頭葉の上側頭回に加えて、頭頂葉の上頭頂小葉、前頭葉の上および中前頭回において代謝低下部位が観察された。一方、人工内耳を1年以上装用している高度難聴高齢者においても上側頭回の前半部分、上頭頂小葉、上前頭回等に代謝低下が観察されたが人工内耳を装用していない高齢者と比べ、健常者との差は少なかった。高齢者における高度難聴の脳代謝への影響は、聴覚野である上側頭回にとどまらず上頭頂小葉や上前頭回においても観察され、難聴が聴覚野だけでなくより高次の脳機能に影響を及ぼすことが示唆された。また、高度難聴者における人工内耳による聴覚補償は、難聴による脳機能低下を軽減できる可能性がある。ただし、これらの知見が普遍的なものであることを示すためには、より多数例での検討が必要である。
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