研究課題/領域番号 |
18K09394
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
加瀬 諭 北海道大学, 大学病院, 講師 (60374394)
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研究分担者 |
神田 敦宏 北海道大学, 医学研究院, 特任講師 (80342707)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 糖尿病網膜症 / 脈絡膜 / αBークリスタリン |
研究実績の概要 |
糖尿病網膜症は成人の重大な失明原因であるが、依然の病態生理は完全には解明されていない。近年、糖尿病網膜症の初期において、網膜だけでなく網膜の視細胞の栄養を司る脈絡膜も形態学的に変化していることが判明した。実際、我々は網膜症がまだ見られていない糖尿病眼において、日常臨床で行われる光干渉断層計(OCT)画像を解析し、正常眼に比較し脈絡膜の血管に相当する管腔領域が狭小化することを見出した(Endo H, Kase S, et al. Garefes Arch Clin Exp Ophthalmol 2019)。そこで我々は、その病態を解明するためにストレプトゾトシン(STZ)誘導糖尿病マウスを作製した。STZ誘導後2か月で、マウスOCT所見により網膜色素上皮(RPE)・脈絡膜複合部位は有意に肥厚していることを確認した(P<0.05)。STZ誘導2か月の病理組織学的所見では、脈絡膜毛細血管板の管腔が大小不同になり、コントロールマウスに比較し有意にRPE細胞数が減少していることを確認した(P<0.05)。さらに酸化ストレスマーカーの一つである4-HNEによる免疫組織化学的検討を行ったところ、STZ誘導2か月の糖尿病マウスの66%でRPEに4-HNEが陽性であることを確認した。加えて、同マウスに置いて、RPE。脈絡膜複合タンパクを抽出し、αBークリスタリンの発現をELISA法で検討したところ、コントロールに比較し糖尿病マウスにおいて、有意にそのタンパク発現が低下していることを確認した。現在我々は、糖尿病に伴うαBークリスタリンの発現低下が脈絡膜厚の調節に関与してるのではないかと推測し、培養RPE細胞を用いて、αBークリスタリンの発現調節機構を明らかにすべく研究計画を練っている状況である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
糖尿病マウスモデルにおいて、脈絡膜厚の変化に伴いRPEの酸化ストレスの増加、RPE・脈絡膜複合タンパクにおけるαBークリスタリンの発現低下がみられることも突き止めている。従い、概ね研究計画書作製時の計画通りに進んでいると思われる。一方で、実際の糖尿病患者からの採血はまだ施行できていない。当研究室との議論で、まずはSTZ誘導マウスの血液を用いて、αBークリスタリンの濃度に変化があるか、ELISA法を用いて検討することを優先する方針となった。その結果を確認後、ヒト血液の採取を開始する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は培養細胞を用いた実験を進め、糖尿病におけるRPEのαBークリスタリンの発現低下の機序を解明し、RPEのアポトーシス、細胞死との関連を解明する予定である。実際には、培養RPE細胞に高血糖負荷し、RPE細胞の生細胞率の変化、アポトーシスの有無を各々、MTTアッセイ、カスパーゼ-3の活性化にて評価する。同時に、STZ誘導糖尿病マウス、コントロールマウスの血液を採取し、αBークリスタリンの濃度をELISA法にて測定する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
糖尿病モデルマウスにおける採血がうまくいかず、αークリスタリンの濃度測定の検討が試行できなかった。併せて、ヒト糖尿病患者の血液採取も不可であった。そのため、濃度測定に使用するELISAの追加発注がなかったため、次年度使用額が生じた。次年度においては、マウスの採血の効率化と精度の高い十分な量の血液を採取すべく検討を重ね、ELISAの追加発注を順次行い、αークリスタリンの濃度測定を検討する予定である。併せて、ヒト糖尿病患者の血液も採取し、同様に検討を行う。
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