研究課題/領域番号 |
18K09395
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
藤田 幸輔 東北大学, 医学系研究科, 助教 (80708115)
|
研究分担者 |
中澤 徹 東北大学, 医学系研究科, 教授 (30361075)
西口 康二 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (30447825)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | アデノ随伴ウイルス / ゲノム編集 / 網膜 / 遺伝子治療 |
研究実績の概要 |
近年、遺伝子解析技術の発展により眼疾患の遺伝的背景が急速に解明されつつある。しかし、同定された多くの疾患関連遺伝子の機能解析が十分なされていない。一方、近年、効率的な遺伝子機能解析手法としてCRISPR-Cas9システムによるゲノム編集が注目されている。これを用いて短時間かつin vivoで網膜神経細胞における遺伝子機能を評価する場合、アデノ随伴ウイルス(AAV)を用いてターゲット細胞にシステムを導入することになるが、AAVは搭載可能なインサートサイズが小さいという難点がある。本研究は、CRISPR-Cas9システムによるゲノム編集に必要な各パーツを小型化することにより1つのAAV上に搭載したAll-in-one AAVベクターを作製し、網膜細胞を対象に効率的な遺伝子機能解析を可能にする技術開発を目的とする。 まずは、プロモーター配列の小型化を行った。視細胞特異的なプロモーターとしてGRK1プロモーターに着目し、相同性や転写因子結合部位等を加味して、各種の小型化したプロモーター配列を選定し、それにレポーター遺伝子として蛍光タンパク質を組み込んだAAVベクターを作製した。作製したAAVをマウス眼内に導入し、レポータータンパク質の発現を評価した。その結果、93bpの小型化した視細胞特異的プロモーター配列を同定した。さらに、ゲノム編集のためのgRNAの選定を行った。標的遺伝子にGnat1を用い、gRNAを設計・評価し、ゲノム切断効率の良好なgRNAを選定した。続いて、得られたプロモーター配列とgRNAを組み込んだゲノム編集用AAVを作製し、マウス眼内に導入した。その結果、標的部位のゲノム編集を確認し、そのゲノム編集による効果を組織学的、電気生理学的、行動学的に評価することができた。 本研究は効率的な遺伝子機能解析の大幅な効率化とともに、遺伝子治療への応用も期待できるものである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度はgRNAの設計とゲノム編集効率の検証を行うとともに、年度後半からAll-in-one AAVベクターの作製に取り組む計画であった。現在までのところ、視細胞の標的遺伝子のgRNAの設計とゲノム編集効率の検証は終了した。また、この過程でgRNAの設計と評価についてのノウハウを習得することができたため、今後は速やかにgRNAの選定を行うことができる。また、All-in-one AAVベクターの作製に重要なプロモーターの小型化も行うことができた。さらにin vivoでのゲノム編集も行っている。現段階において、研究を進める上で大きな問題はなく、おおむね順調に進展していると評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後はマウス網膜でのゲノム編集効率の評価を進めて行く、評価方法として、網膜ゲノム解析、ウェスタンブロット、RT-PCR、免疫組織学的解析に加えて、電気生理学や行動学を用いた視力の測定も行っていく。その過程で改良が必要な事態が生じた場合は、適宜、AAVベクターの改良・改変を行いアップグレードしていく。また、網膜も他の細胞種を標的にしたゲノム編集AAVベクターの開発も行っていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由) AAV作製には多量のプラスミド作製・培養関係の消耗品、また精製過程にはカラムや溶液、濃縮用のカラムも必要であり、クオリティチェックにもSDS-PAGE、ウイルスゲノムの定量、遺伝子発現解析を行う必要があり、関連試薬費として計上した。しかし、当該年度はAAVベクター作製のための条件検討を行っていたこともあり、AAVの消費が想定より若干少なかったため、次年度に繰り越す結果となった。 (使用計画) マウスを用いてゲノム編集AAVベクターの評価を行う予定であり、多量のプラスミド作製・培養関係の消耗品、また精製過程にはカラムや溶液、濃縮用のカラムも必要であり、クオリティチェックにもSDS-PAGE、ウイルスゲノムの定量、遺伝子発現解析を行う必要がある。また、使用するマウスについても費用を要する。
|