研究課題/領域番号 |
18K09396
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
加治 優一 筑波大学, 医学医療系, 研究員 (50361332)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ラマン顕微鏡 / CARS / アミロイド / 角膜ジストロフィ / 白内障 / アルツハイマー病 / シュナイダー角膜ジストロフィ / アミロイドーシス |
研究実績の概要 |
非侵襲的に物質の局在と組成を明らかにすることのできるラマン顕微鏡は,現在,実験室レベルで機器の開発および応用が行われつつある新しい技術である.ラマン顕微鏡の発展が最も期待されるのが医療分野であり,その中でも光学機器の応用が最も行いやすい眼科での臨床応用を行うことが,日本における新しい医療機器開発において急務である. 本年は,ラマン顕微鏡の感度を最も高めたコヒーレント反ストークスラマン散乱を検出できる機器を,眼科診察に用いる細隙灯に取り付けることで,世界初のコヒーレント反ストークスラマン散乱検出細隙灯顕微鏡を作成することができた.現在は豚眼および牛眼を用いて眼球,特に角結膜におけるラマン散乱光を得ることができており,脂質・タンパク質・DNA/RNAの局在を可視化することができるようになっている.さらには水晶体においても,生体分子の局在を明らかにすることができるようになってきた.同時に,病的な眼組織における診断を目的に,ラマン顕微鏡の診療応用を目指している.具体的には角膜にアミロイドが沈着する角膜ジストロフィおよび角膜への異常な脂質沈着によって生じる老人環やシュナイダー角膜ジストロフィの角膜を用いて,アミロイドの特徴である繰返し配列のタンパク質の凝集物や,老人環・シュナイダー角膜ジストロフィに特徴的な脂質の沈着を可視化できるように条件を設定している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
筑波大学理学部を用いて,世界で最も高感度なラマン顕微鏡の開発に関わることができており,眼科用の顕微鏡との一体型のプロトタイプを作成することができている.特にラマン顕微鏡の臨床要用のためには,透過光ではなく散乱光を用いたラマン光解析を行う必要がある.しかしながら散乱光の強度は一般に弱いために,臨床応用に支障があった.我々はコヒーレント反ストークスラマン散乱を用い,高感度のスペクトル解析装置を用いることにより,散乱光を用いたラマン光解析を行うことが可能とすることができた. ヒトの病的角膜および疾患モデルの動物眼球を用いて,in vivo の眼球におけるラマン散乱光のデータを得ることができるようになってきている.これらのデータは,世界初のラマン散乱光の解析のできる眼科診療機器の開発につなげることができる. しかしながら,現在までの研究成果を論文として公表することができずにいるために,これからは新しいデータを得るとともに,世界に向けてデータを公表し,特許化を目指す.
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今後の研究の推進方策 |
ラマン顕微鏡の臨床応用のためには,生体に侵襲を与えない程度の微弱なレーザー光を対象に照射し,対象から得られる反射光を解析に用いることが必要である.現在,スペクトル解析装置の感度を高めることにより上記の条件を解決するとともに,ほぼリアイルタイムで解析像を可視化できるように調整中である. ラマン顕微鏡の眼科応用は世界で初めての快挙であるために,得られるデータやデータ入手法を含めて特許化が必須である.筑波大学の産学協同部門と力を合わせて,ラマン顕微鏡による生体観察を世界に誇る医療機器にまで昇華させる足がかりを得ることを目的とする. 特許化とともに,論文化によるデータの公表もまた今年の最大の目的として据えつつ,研究を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
動物実験眼およびヒトの眼球を得るための費用が物品費では支払うことができず,「その他 」の費用で支払うこととなったために,計画と異なる使用額と分配になった.
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