研究課題/領域番号 |
18K09398
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
蕪城 俊克 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (00280941)
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研究分担者 |
和田 洋一郎 東京大学, アイソトープ総合センター, 教授 (10322033)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ヒトゲノム / 網膜 / 血管内皮細胞 / エピゲノム解析 / 網羅的遺伝子解析 |
研究実績の概要 |
本研究は、ヒト網膜動脈および静脈血管内皮細胞の免疫学的特性を解明する目的で、ヒト眼球から網膜血管内皮細胞を動脈、静脈それぞれから採取し、遺伝子発現解析およびエピゲノム解析を行う。 まず我々はブタ眼球を用いて網膜動脈、網膜静脈血管からそれぞれの血管内皮細胞の初代培養系を確立した。次に、その手技を応用して眼窩腫瘍などで眼球摘出となった患者の眼球から、網膜動脈内皮細胞、静脈内皮細胞の初代培養を試みた。まず、網膜動脈血管・静脈血管を別々に採取し、血管内皮細胞の初代培養を試みた。しかし、細胞増殖は不良であった。そこで他の方法として採取した網膜動脈血管・静脈血管からMagnetic-Activated Cell Separation(MACS)を用いてCD31抗体付着ビーズでCD31陽性血管内皮細胞の単離を試みた。しかし、得られる細胞数は少なく、細胞のviabilityが低く、RNA解析は不能であった。 これまでの研究で、ヒト摘出眼球からの網膜血管内皮細胞の採取は、①条件検討で使用してきたブタと比較しヒトのサンプルの場合高齢であることや、抗がん剤の治療歴がある症例も含まれるため細胞培養が困難であること、②採取した網膜血管をコラゲナーゼ処理して、血管内皮細胞をMACSで直接採取する方法を用いても、一眼から得られる細胞数は極めて少なく更なる条件検討が必要だと考えられる。今後はヒト摘出眼球からの網膜動脈・静脈それぞれの血管内皮細胞の単離の試みを続行すると同時に、ヒト網膜毛細血管内皮細胞株を用いた研究も同時に進行する方針とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、ヒト網膜動脈および静脈血管内皮細胞の免疫学的特性を解明する目的で、ヒト眼球から網膜血管内皮細胞を動脈、静脈それぞれから採取し、遺伝子発現解析およびエピゲノム解析を行う。 まず我々はブタ眼球で網膜動脈、網膜静脈血管からそれぞれの血管内皮細胞の初代培養系を確立した。次に、その手技を応用して眼窩腫瘍などで眼球摘出となった患者の眼球から、ヒト網膜動脈内皮細胞、静脈内皮細胞の初代培養を試みた。2019年2月28日までに国立がん研究センター中央病院で眼球摘出となった7例7眼について、患者・家族の同意のもと摘出眼球から網膜血管内皮細胞の採取を試みた。7眼中2眼は眼内腫瘍・増殖性糖尿病網膜症のため血管の採取は困難であった。残りの眼球に対し、以下の研究を行った。まず、網膜動脈血管・静脈血管を別々に採取して血管内皮細胞の初代培養を試みた。しかし、細胞増殖は不良であった。そこで他の方法として採取した網膜動脈血管・静脈血管からMagnetic-Activated Cell Separation(MACS)を用いてCD31抗体付着ビーズでCD31陽性血管内皮細胞の単離を試みた。1眼球から1.0-5.0x10^3個程度のCD31陽性細胞が得られた。しかし、抽出されたRNAの断片化が進んでいたため、トランスクリプトーム解析用のライブラリー作成には至らなかった。これは細胞数が少ないことと操作中のRNaseの影響が原因と考えられた。 ヒト網膜血管内皮細胞をMACSで直接採取する方法でも、得られる細胞数は極めて少なく、かつ実験手技に時間がかかるためRNAを壊れない状態で抽出することは極めて難しいことが明らかとなった。今後は操作時間の短縮と温度管理を徹底してヒト摘出眼球からの網膜動脈・静脈血管内皮細胞の単離の試みを継続しつつ、ヒト網膜毛細血管内皮細胞株を用いた研究も試みる方針とする。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究でブタ眼球から網膜動脈、網膜静脈に分けた網膜血管内皮細胞の採取は成功しているが、ヒト眼球からの動脈、静脈に分けた網膜血管内皮細胞の分離・培養には成功していない。ヒトで成功しない理由として、眼球摘出になる患者の眼球は高齢者が多く、かつ抗がん剤などの影響で細胞増殖しにくいためと推測する。そのため、今後はヒト摘出眼球からの網膜動脈・静脈血管内皮細胞の単離の試みを継続しつつ、バックアップの研究としてヒト網膜毛細血管内皮細胞株(ACBRI 181、Cell systems)を用いた研究も行うこととした。ヒト網膜毛細血管内皮細胞株に対してTNFαなどのサイトカイン刺激を行い、ヒト網膜毛細血管内皮細胞の反応を4つのエピゲノム解析(①RNA-seqによるトランスクリプトーム解析、②主要なヒストン修飾6種類、③DNAメチル化解析、④網羅的オープンクロマチン領域解析)を行う実験を一部開始している。
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