研究課題
我々は内因性ぶどう膜炎と比べ感染性ぶどう膜炎では蛍光眼底造影で高率に動脈炎、網膜動脈血管閉塞が観察されることを見いだした(Kaburaki T, et al. Jpn J Ophthalmol. 2020)。本研究では、ヒト網膜動脈および静脈血管内皮細胞の免疫学的特性を解明する目的で、ヒト眼球から網膜動脈および静脈血管内皮細胞を分離培養し、遺伝子発現解析およびエピゲノム解析を試みた。まず我々は眼窩腫瘍などで眼球摘出となった7例の患者眼球から、網膜動脈血管・静脈血管を別々に採取し、それぞれの血管内皮細胞の初代培養を試みた。しかし、得られる細胞数が少ないことや、細胞のviabilityが低いことから、RNA抽出が困難であった。そこで我々は眼球から採取した網膜血管内皮細胞を用いた解析から、ヒト網膜毛細血管内皮細胞株(HREC, ACBRI 181、Cell systems)を用いた研究に変更した。我々は感染性と内因性ぶどう膜炎患者から採取した硝子体液に含まれる炎症性サイトカイン33種類の濃度を測定、統計学的に比較し、内因性ぶどう膜炎ではTNFαとそれによって発現誘導されるケモカインなどの発現が上昇するのに対し、感染性ぶどう膜炎では、TNFα以外にもIL-1βやインターフェロン(IFN)も高値となることを見いだした(Fukuhara H, et al. Sci Rep 2020).そこでHRECにTNFα、IL-1β、IFNγの複合刺激を行い、刺激後の遺伝子発現の変化をRNA sequenceで解析した。その結果、3種類の複合刺激によって発現が著明に上昇する遺伝子群を見いだした。現在、この遺伝子群のHRECにおける役割の解析を行っている。
3: やや遅れている
当初本研究は、ヒト網膜動脈および静脈血管内皮細胞の免疫学的特性を解明する目的で、ヒト眼球から網膜血管内皮細胞を動脈、静脈それぞれから採取し、遺伝子発現解析およびエピゲノム解析を行うことを目標としていた。しかし、眼窩腫瘍などで眼球摘出となった患者眼球からヒト網膜動脈内皮細胞、静脈内皮細胞の初代培養を試みたが、抗がん剤治療後の影響もあり、viabilityの高い細胞は分離培養できず、遺伝子発現の解析は出来なかった。そこで動脈・静脈に分けた血管内皮細胞の解析を諦め、市販のヒト網膜毛細血管内皮細胞株(HREC, ACBRI 181、Cell systems)を用いた研究に切り替えた。我々は感染性と内因性ぶどう膜炎患者の硝子体液中の33種類の炎症性サイトカインの発現を解析し、内因性ぶどう膜炎ではTNFαとそれによって発現誘導されるケモカインなどの発現が上昇するのに対し、感染性ぶどう膜炎では、TNFα以外にもIL-6やインターフェロン(IFN)も高値となることを見いだした(Fukuhara H, et al. Sci Rep 2020).そこでHRECにTNFα、IL-6、IFNγの複合刺激を行い、刺激後の遺伝子発現の変化をRNA sequenceで解析した。その結果、3種類の複合刺激によって発現が著明に上昇する遺伝子群を見いだした。現在、この遺伝子群のHRECにおける役割の解析を行っている。
ヒト摘出眼球からの動脈、静脈に分けた網膜血管内皮細胞の分離・培養は残念ながら成功しなかった。そのため、今後はヒト培養網膜毛細血管内皮細胞株(HREC, ACBRI 181, Cell systems)を用いて感染性ぶどう膜炎における網膜血管炎の遺伝子発現の検討を行う方針とした。我々は感染性ぶどう膜炎の硝子体中ではTNFαのみならずIL-6、IFNγなどのproinflammatory cytokineも発現が上昇していることを見いだした。そこでHRECに感染性ぶどう膜炎の眼内状態を模したTNFα、IL-6、IFNγの3種の炎症性サイトカイン刺激を行い、刺激前後の遺伝子発現の変化を検討した。その結果、3つの炎症性サイトカインの同時刺激で著明に発現が上昇する遺伝子群を見いだした。現在その遺伝子を過剰発現させたHREC、およびノックダウンしたHRECを作成し、HRECに於ける役割の検討を行っている。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (18件) (うち国際共著 10件、 査読あり 18件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (28件) (うち国際学会 11件、 招待講演 6件) 図書 (2件)
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