研究課題/領域番号 |
18K09407
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
相馬 剛至 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (70582401)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 水疱性角膜症 / 架橋剤 / 家兎 |
研究実績の概要 |
家兎における水疱性角膜症モデルの作製については既報に従って、次の方法で行った。すなわち、白色家兎の水晶体を超音波乳化吸引したのちに、前房内に手術用粘弾性物質を注入し、角膜内皮全面をシリコンチューブで物理的に掻破した。家兎の角膜内皮細胞は生体内で増殖するため、前房内にトレパンブルーを注入して残存する内皮細胞を可視化することで、角膜裏面の内皮細胞が観察できなくなるまで掻破を行った。処置後、細隙灯顕微鏡および前眼部光干渉断層計にて角膜全体が浮腫状(水疱性角膜症)であることを確認した。 つづいて家兎水疱性角膜症モデルに生体適合性架橋剤PEG-POG10を点眼にて投与するにあたり、角膜上皮剥離の有無の必要性について検討した。実験にはAlexa488でラベルした10wt%のPEG-POG10を用い、上皮剥離ありおよび剥離なしの個体に対し、5分毎に60分間点眼した。結果、上皮剥離を行った個体では実質深層にまでPEG-POGが浸透していた。一方、上皮剥離を行わなかった個体では実質内へのPEG-POGの浸透はわずかであった。コントロールの正常角膜では全くPEG-POGの浸透はみられなかった。以上より、角膜上皮剥離を行った上で点眼を行うプロトコールとした。続いて、PEG-POGの濃度による実質内浸透度の違いについて検討した。1、0.5、0.1wt%のPEG-POGを角膜上皮を剥離した水疱性角膜症モデルに5分毎に60分間点眼を行った。その結果、0.1wt%ではほとんど検出されず、0.5、1wt%と高度になるに従い、浸透度は高くなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画どおり、家兎水疱性角膜症モデルを確実に作製することが可能であった。また、生体適合性架橋剤の投与条件として、角膜上皮剥離の必要性についても、実験により検討した。さらに生体適合性架橋剤の至適濃度についても、濃度の異なる点眼液を家兎水疱性角膜症モデルに点眼する検討を行った。以上より今年度は計画通りにおおむね順調に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に検討した条件をもとに、次年度以降では諸条件を決定した上で、家兎水疱性角膜症モデルに対する生体適合性架橋剤の点眼の効果について検討する。in vivo観察では細隙灯顕微鏡ならびに前眼部光干渉断層計を用いる。長期の観察期間ののち組織学的検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
情報収集ならびに条件を最適化するための予備検討において、予想よりも少ない検討で結果が得られたため、次年度使用額が生じた。翌年度は上皮剥離の有無、点眼濃度決定のための条件検討を今年度に引き続き行った上で、水疱性角膜症モデルに対する生体適合性架橋剤の点眼効果を検討する。
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