研究実績の概要 |
加齢黄斑変性(Age-related macular degeneration,以下AMD)は失明に至る難治性の眼疾患で加齢を背景とした網膜色素上皮細胞(以下RPE)の機能低下(老化)が原因で発症する。本研究では,主要な長寿遺伝子であるサーチュイン(以下SIRT)に着目し,これらの遺伝子が網膜やRPEの老化に及ぼす影響を,ゲノム編集技術を用いて作成した遺伝子改変RPEおよびマウスを用いて明らかにす る。 上記の目的を達成するために当該年度は,SIRT遺伝子に着目し,SIRT遺伝子のゲノム編集を行ったiPS細胞を用いてRPEへの分化誘導を試みた。しかし,SIRT遺伝子をノックアウトすると、iPS細胞の増殖速度が極端に低下すると共に,RPEへの分化がうまく行えないことが判明した。そこで,SIRT遺伝子と並行して進めていた他の因子のゲノム編集の中から,RPEの機能に重要な役割を果たすと考えられるカリウムチャネルについて,SIRT遺伝子と同様にゲノム編集を行い,RPEを誘導して当該カリウムチャネルの機能を解析した。その結果,単層に配列したRPEの下に異常構造を呈するRPEを認め,免疫染色を行った結果カリウムチャネルの機能阻害によってRPEのネクローシスが誘導されることが明らかになった。このようなRPEの細胞死は網膜血液関門の破綻につながり,AMDでみられる脈絡膜新生血管の原因となる可能性がある。今後AMDの病態との関連についてさらなる検討を行う予定である。
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