研究課題/領域番号 |
18K09411
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
近間 泰一郎 広島大学, 医歯薬保健学研究科(医), 准教授 (00263765)
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研究分担者 |
高 知愛 広島大学, 医歯薬保健学研究科(医), 准教授 (70314797)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 光線力学療法 / 角膜感染症 / 薬剤耐性 / 抗病原微生物 / アカントアメーバ |
研究実績の概要 |
本研究は,新規光感受性物質である水溶性カチオン性クロリン誘導体のTONS504と660nmの単波長LED光照射装置用いた光線力学的抗微生物化学療法 (photodynamic antimicrobial chemotherapy: PACT)による抗病原微生物薬に頼らない新しい角膜感染症治療法の確立が究極の目的である。 本年度は,in vitro においてアカントアメーバに対するPACTが,栄養体に対して非常に有効であることが確認できた。また,あらゆる治療に抵抗性を示すシストに対しても抑制効果が確認できた。さらに、in vivoの研究においては,日本白色雄性家兎を用い,アカントアメーバ角膜炎感染モデルを作製できた。現時点では、1回施行のPACTにおいて50%以上の有効性が示すことができた。 臨床所見ならびに組織学的検討では,TONS504-PACTにより感染を治癒せしめた角膜においても好中球を中心とした炎症細胞の浸潤が強い例も多く,黄色ブドウ球菌感染モデルにおいてステロイドの結膜化注射併用のPACTでは炎症軽減はほとんど有効性が見られなかった。 透明性の維持が視機能に非常に重要な役割をもたらす角膜の治療法として、感染症の治癒はもとより炎症の軽減を図る必要があることを感じている。 アカントアメーバ角膜炎感染モデルに対しては、今後、治療効率の向上を目指して複数回のPACTを施行しその効果判定を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は,in vivo研究としてアカントアメーバ角膜炎モデルを白色家兎を用いて完成し、TONS504-PACTの臨床的有効性が確認できた。また、TONS504-PACTを行った角膜の組織学的検討も進んでいる。 一方で、黄色ブドウ球菌感染モデル以外の感染症モデルの確立とTONS504-PACT施行による効果判定が遅れている。今後も,動物実験施設の感染区域内で一度に作成できる感染症眼には制約上上限があるため,スピードアップが困難であるが,感染効率が向上していることより遅れを挽回できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
感染の成立並びにPACT施行により角膜に生じる高度な組織浸潤をステロイド結膜下注射での併用で試みたが,奏効しなかった。投与法の変更あるいは薬剤の変更を検討する。 また,組織の炎症惹起に照射光源の影響について検討する目的で,新たにパルス照射が可能なレーザー光源(664nm)を試作しin vitroでその有用性を並行して検討する。 今後も,現在の白色家兎感染モデルを用いたin vivo研究を継続し, 臨床応用につながる基盤データの蓄積を目指す。
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