光感受性物質である水溶性カチオン性クロリン誘導体のTONS504と光照射装置用いた光線力学的抗微生物化学療法(photodynamic antimicrobial chemotherapy: PACT)による新しい角膜感染症に対する臨床応用が究極の目的である。 本年度は、日本白色雄性家兎を用いてアカントアメーバ角膜炎感染モデルを確立し、1回施行のPACTにおいて50%以上の有効性が示すことができた。同時に、組織学的検討により角膜内皮および網膜への有害な影響がないことも確認された。アカントアメーバ角膜炎感染モデルに対しては、今後、治療効率の向上を目指して複数回のPACT施行を検討する。また、これまで多くの報告があるメチレンブルーとTONS504の光線力学的抗微生物効果(photodynamic antimicrobial effect: PAE)の違いについてin vitroで検討したところ、TONS504がメチレンブルーと比較して、黄色ブドウ球菌では約100倍、酵母型真菌であるカンジダでは約10倍、緑膿菌ではほぼ同等の有効性を示した。 さらに、より効率的な光線照射を目的に、LED照射装置とレーザー照射装置の効果の比較とパルス照射の有用性についての検討を予定している。また同時に、アカントアメーバ角膜炎モデル以外の感染症モデルの確立とTONS504-PACT施行による効果判定を継続して施行する予定である。 総合的な成果として、TONS504-PACTについての必要な有効性、安全性、汎用性のデータが着実に収集され、臨床応用に着実に近づいている。
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