研究課題/領域番号 |
18K09413
|
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
北岡 隆 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (80234235)
|
研究分担者 |
柴田 裕一郎 長崎大学, 工学研究科, 教授 (10336183)
上松 聖典 長崎大学, 病院(医学系), 講師 (30380843)
井上 大輔 長崎大学, 大学病院, その他 (60622610) [辞退]
宮城 清弦 長崎大学, 病院(医学系), 医員 (80840701)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 3D手術 / ヘッドアップ手術 / 4Kカメラ / 4Kモニター / オーバーレイ |
研究実績の概要 |
現在使用できる3Dヘッドアップ手術は記録用のハイビジョンカメラ2台を使用し、その映像を3D用ハイビジョンモニターに移し、偏光眼鏡を用いて観察するものである。 観察用モニターを1.5mに設置した場合、モニターの走査線の間隔は600μmで、一方、視力1.0のヒトの眼の解像度は1.5mで500μmを分別することができる。つまりハイジョンカメラの解像度はヒトの眼の分別能にやや劣るもののほぼ匹敵する。しかし3D映像を取得するため縦もしくは横の解像度が半分になってしまう。これを実際にEdmund社のテストターゲットを用いて検証した。顕微鏡の鏡筒観察による解像度は最低倍率では1mmあたり19本の線を分別できた。一方ハイビジョンカメラによる3D映像取得のモニター観察では1mmあたり14本の線の分別にとどまった。最高倍率では鏡筒観察が1mmあたり90本に対して3Dでは32本であった。 ヒトの分別能に近い状況にするためにまずハイビジョンカメラを画素ずらしの4K出力カメラに変更し、検証を行った。最高倍率での解像度は1mmあたり41本という結果となった。 次に被写界深度は最低倍率では鏡筒観察で27mm、ハイビジョンカメラによる3D観察で20mm、4K出力カメラでは14mmと浅くなっていった。最高倍率ではいずれの観察方法でも3~4mmと差がなかった。 飛出し量と縦幅の比から像の飛出し角を測定した。tanθ=飛出し量/縦幅が成り立ち、実際の角度が45度の場合、鏡筒観察では20度、3D観察では50度の飛出し量であることがわかった。 このシステムをより良いものとするには、明るさを維持できるハイビジョンカメラが、4K出力カメラよりも有利で、3D映像取得時の解像度低下を補うため、4K3Dモニターの使用を考慮する必要がある。これに加えオーバーレイを追加することで近未来の手術システムが構築できる可能性がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3Dヘッドアップ手術システムを構築した。このシステムはハイビジョンカメラ2台を使用し、その映像を3D用ハイビジョンモニターに移し、偏光眼鏡を用いて観察するものである。 ハイジョンカメラを使用したシステムでは、解像度はヒトの眼の分別能にやや劣るが、実際にEdmund社のテストターゲットを用いて検証した。ハイビジョンカメラに加え、画素ずらしの4K出力カメラを使用し、検証を行った。その結果解像度は鏡筒観察>4K 出力カメラ>ハイビジョンカメラとなった。また被写界深度は鏡筒観察>ハイビジョンカメラ>4K出力カメラの順となった。 飛出し量と縦幅の比から像の飛出し角を測定した。tanθ=飛出し量/縦幅が成り立ち、実際の角度が45度の場合、鏡筒観察では20度、3D観察では50度の飛出し量であることがわかった。 カメラへの光路を100%とした場合、非常に鮮明な像が得られた。しかし鏡筒観察の余地を残すため、カメラ20%+鏡筒80%とした場合、両者の優位な点を損ない、満足する結果が得られなかった。また4Kモニターを使用することで、ハイビジョンカメラの解像度不足を補うことができる可能性がある。 ここまでの実験結果から、現状でのベストの選択はカメラへの光路を100%としたハイビジョンカメラを使用し、その像を4Kモニターに入力するシステムが現状で最も短所の少ないシステムと言える。
|
今後の研究の推進方策 |
画素ずらし4K出力カメラの改善もしくは完全4Kカメラの開発が望まれる。また現状のカメラではダイナミックレンジ(適正に画像に表示できる、最も明るい部分から最も暗い部分までの範囲)が狭いことが問題の一つとしてあげられ、ハイダイナミックレンジのカメラが望まれる。これによりヒトの眼と同じような特性の画像が取得できる可能性がある。更にモニターを4K3Dモニターに変える必要がある。 このシステムのもう一つの課題が術前の画像データを術中の映像にオーバーレイすることである。現状のシステムが像をモニターに直接入力しており、簡単なオーバーレイしか行うことができない。これを克服するためにはカメラで取得した像を一度コンピューターに入力し、それをモニターに流す必要がある。すると実際の像とモニター上での映像にタイムラグ(遅延)が生じてしまう。この許容範囲は0.1秒以下であり、ハードとソフト両面からの改善が必要である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
3Dモニターによるヘッドアップ手術と鏡筒観察による手術の切り替えには、ルキナ社製のビームスプリッターが必要であるが、本研究そのものには必ずしも鏡筒観察は必要なく、よってビームスプリッターの購入も研究の遂行には必要なくなった。ビームスピリッター購入代金分相当を、次年度使用とした。 使用計画として、術前情報をモニター上にオーバーレイするため、コンピュータを介して動画をモニターに映すことが必要で、動画を扱うためにハイスペックのコンピューターおよびビデオキャプチャーボードの購入を行う予定で、それに加えソニー社製4Kモニター使用のための打ち合わせ旅費に使用予定。
|