研究課題/領域番号 |
18K09417
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
渡辺 彰英 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80516188)
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研究分担者 |
福岡 秀記 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00381963)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | DNA、RNA抽出 / 正常組織 / 腫瘍組織 |
研究実績の概要 |
本研究は、①次世代シーケンサーを用いた脂腺癌の網羅的遺伝子解析、②臨床病型との照合、人種差の原因解明、③発癌、増殖及び転移に関わる細胞内伝達機構を明らかにし、予後推測および内科的治療法につなげることが目的である。 今年度は、次世代シーケンサーを用いて遺伝し解析できる段階に検体を抽出する作業を主に行ってきた。当科における脂腺癌症例は2007年から2017年までの11年間で56例、そのうち腫瘍および周囲の正常組織を含めた凍結保存検体があるのは24例である。これらの検体については、正常組織を含む腫瘍組織検体であるため、顕微鏡下に正常組織と腫瘍組織の鑑別および抽出作業を行った。組織の挫滅等により正常組織と腫瘍組織の分離が不可能な症例もあったが、数検体について試験的にDNA,RNAの抽出処理を行ったところ、DNA、RNAともに解析可能な品質条件は満たしており、次世代シーケンサーによる解析の準備は着実に進行している。 また、今年度の新たな脂腺癌症例で遊離瞼板移植を施行した症例については、健側の瞼板を得ることができるため、その余剰検体(健常側の瞼板)を保存している。正常組織である健側の瞼板を解析することで、完全にコンタミネーションのない正常組織と腫瘍組織の解析および比較を行うことができる。これらの検体もすでに5例以上得ることができており、次世代シーケンサーによる解析前の状況として順調に検体採取、分離、DNAおよびRNA抽出ができたと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、次世代シーケンサーを用いて遺伝し解析できる段階に検体を抽出する作業、具体的には顕微鏡下に正常組織と腫瘍組織の鑑別および抽出作業を行ったが、組織の挫滅等により正常組織と腫瘍組織の分離が不可能な検体もあった。同一検体からの組織抽出は精度が非常に重要であるが、正常組織として抽出した組織にわずかでも腫瘍細胞がコンタミネーションしていれば、全く正しい結果が得られないこととなる。しかし、新たな脂腺癌症例の健側の同部位の瞼板から得られた正常組織は、全くコンタミネーションがないため、それらの検体からの遺伝子解析の結果が、最も信頼度が高いと期待できる。 当初の予定よりも総数が少なくなる可能性はあるが、当科のように脂腺癌症例の紹介数が多い施設では、全体の研究期間中に十分な症例数を得られる可能性も高く、今後に期待できる。 総じて、今年度はDNA,RNAの抽出と、完全にコンタミネーションのない新たな検体の採取が可能であっとことから、進捗は順調であったといえる。。
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今後の研究の推進方策 |
今後は次世代シーケンサーを用いて遺伝子解析に取りかかる。DNAに対しては全エクソーム解析、RNAに対しては全トランスクリプトソーム解析を施行する予定である。同一症例の腫瘍部分の遺伝情報と正常部分の遺伝情報が得られ、その比較により、腫瘍部分に特異的な遺伝子変異の検索が可能となるが、新たな正常瞼板を得られた症例については、より信頼度の高い遺伝子解析が可能と考える。 同一検体からの正常組織と腫瘍組織の分離は、全例で確実に行えたわけではない上、健側の同部位の瞼板組織が得られた症例もでてきたことから、まずは健側の同部位の瞼板組織と患側の腫瘍組織との遺伝子解析、比較を行う方針とした。 次世代シーケンサーによる解析後は、それぞれの症例の臨床病型との照合を行う。臨床病型の違い、再発の有無、遠隔転移の有無によって分類し、それぞれの群で遺伝子変異に違いがあるかを検討し、臨床動態の違いに関与している遺伝子変異を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
次世代シーケンサーの試薬購入や解析用PCの購入を行わなかったが、海外学会への参加、発表があったため旅費は当初予算よりも大きくなった。 次年度は次世代シーケンサーによる遺伝子解析を行うため、試薬購入による使用を予定している。
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