研究課題/領域番号 |
18K09418
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
緒方 奈保子 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (60204062)
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研究分担者 |
上田 哲生 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (00364068)
吉川 匡宣 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (20632764)
宮田 季美恵 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (40596748)
西 智 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (70571214)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 加齢 / 白内障 / 白内障手術 / QOL / 加齢黄斑変性 / 概日リズム / 生活環境 |
研究実績の概要 |
1.白内障が高齢者のQOLに及ぼす影響 加齢による眼疾患の代表に白内障がある。白内障があると視力が低下するだけでなく、眼底へのブルーライトの到達が妨げられ、概日リズムが障害される可能性がある。そこで、65歳以上の高齢者448名(平均年齢69歳)の横断研究において白内障の重症度と睡眠との関係を検討した。その結果、高齢者で白内障があると、無い群に比べ睡眠効率が悪く(83.8 vs. 85.7%)、中途覚醒時間が長い(53.6 vs. 45.6 min)ことがわかった。白内障により、網膜に存在し概日リズムに関わる内因性光感受性網膜神経節細胞に刺激が伝わらなくなり、概日リズムが崩れると考えられた。 2.白内障と動脈硬化 さらに65歳以上の高齢者443名において白内障群 (n=158) と白内障なし群(n=285) に分け超音波検査で頸動脈の硬化程度(intima-media thickness :IMT)を検討した。その結果、多変量解析で白内障と頸動脈の硬化程度の関係が認められ、白内障があると頸動脈硬化のリスクが約1.6倍高くなることがわかった。(OR, 1.62; 95% CI, 1.01―2.60) 3. 滲出型加齢黄斑変性(wAMD)における血漿von Willebrand因子(VWF)の検討 AMDの発症に補体H因子(CFH)の関与が報告されている。CFHは補体のみでなく止血因子であるVWFの機能を制御する。そこで未治療のwAMD群114例(平均年齢76歳)と年齢をmatchさせた対象群105例において血漿VWF抗原量測定を行った。その結果、血漿VWF抗原量はAMD群164(120 - 215)%、コントロール群128(108 - 165)%とAMD群で有意に上昇しており(p<0.001)、wAMDの病態にVWFが関与しており関わっていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
白内障スタディ調査の解析が進んでいる。 実験研究、臨床研究が進行している。
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今後の研究の推進方策 |
1.白内障スタディの調査、解析を進める。 白内障とうつの関係の解析する。 2.白内障手術後はブルーライトが網膜に多く届くと考えられる。白内障群と白内障手術既往群において、睡眠の変化を検討する。また、白内障手術前後で睡眠、認知機能の変化を検討する。 3.滲出型加齢黄斑変性(AMD)患者で止血因子であるvon Willebrand因子(VWF)が血漿中で上昇している。治療により抗VEGF硝子体注射(による血漿VWF抗原量の変動を検討する。さらに重症なAMDまた眼底出血を起こし予後不良となるAMD患者の要因をVWFマルチマー解析また超高分子量VWF 多重体 (UL-VWFM)の解析より検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
高齢者を対象とした健康調査 (愛称・藤原京スタディ)」の検診結果の解析に予定以上の時間を要しているため、今年度末までに論文・学会発表準備が完了せず、それに関わる費用を計上しなかった。次年度は、検診結果の解析のためのスタッフ謝金と、成果発表の為の国内外の学会参加費用を支出する予定である。
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