研究課題/領域番号 |
18K09420
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
町田 繁樹 獨協医科大学, 医学部, 教授 (30285613)
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研究分担者 |
西村 智治 獨協医科大学, 医学部, 助教 (40633128)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 網膜電図 / ERG / 糖尿病網膜症 / 光干渉断層計血管撮影 / OCTA |
研究実績の概要 |
糖尿病患者での網膜機能を網膜電図(ERG)で評価し、網膜血管形態を光干渉断層計(OCT)血管撮影(OCTA)で捉えて、比較検討することが本研究課題の目的である。昨年度は、正常者と初期の糖尿病網膜症(DR)の患者を対象として研究を進めた。 30名の正常者および90名の糖尿病患者を対象として黄斑局所ERGとOCTAを記録した。正常者と糖尿病患者の年齢はマッチしている。糖尿病患者のうち50名の糖尿病患者はDRを発症しておらず、without DR groupとし、他の40名は軽症の非増殖糖尿病網膜症を伴っておりNPDR groupとした。 黄斑局所ERGは直径15度の刺激スポットを用いて記録し、各成分波の振幅(a、b波および OP波、PhNR)およびOP波の頂点潜時を評価した。OCTAは、3x3 mm画角の画像で撮影し、Superficial とdeep capillary plexus(それぞれSCPとDCP)のvessel density(VD)とfoveal avascular zone(FAZ)の大きさを求めた。黄斑局所ERGとOCTAで得られた所見との間の相関を検討した。 DRの進行に伴ってSCPとDCPのVDは有意に減少した。FAZサイズは拡大傾向にあったが、有意な変化ではなかった。a、b波および PhNR振幅とVDとの間に相関関係はみられなかった。OPs振幅および頂点潜時は、VDの拡大に伴って、それぞれ有意に低下および延長した。また、この相関関係はwithout DR groupでもみられた。 以上の結果から、DR初期に観察される黄斑機能異常には網膜血管形態の変化が関与すると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一昨年度の研究成果として、OCTAで得られるVDは加齢とともに減少することが明らかとなった。したがって、昨年度に対象とした正常者と糖尿病患者の年齢をマッチさせて研究を行った。 今回の研究成果として、眼底にあきらかなDRのないwithout DR groupでも黄斑局所ERGのOPsの振幅ならびに頂点潜時が異常となることが明らかとなった。さらに重要なことに、この黄斑機能変化は網膜毛細血管の形態変化と相関していた。我々は研究開始当初に“早期のDRは血管症か?神経症か?” という課題を掲げた。昨年度の結果から考案すると、ごく初期のDRには血管症が関与すると結論できる。しかし、血管症を伴わないDR、つまり神経症を完全に否定はできない。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度は、DRの黄斑部の機能と血管形態に着目し、成果がえられた。しかし、DRは眼底全体に病変が及び、むしろ眼底の中間周辺部が侵されることがある。したがって、網膜全体の機能と血管形態の関係を検討すべきと考える。 今年度は、swept-source OCTAの利点を生かして高画角でOCTAを撮影する。また、全視野刺激ERGを用いて網膜全体から電気応答を記録し、全視野刺激ERG所見と高画角OCTAとの関係を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品としてコンタクトレンズ電極を昨年度の予算に計上していたが、その生産が遅れており、次年度に計上し直している。今年度は、昨年度得られた研究成果を論文として公表する。そのための英文校正ならびに掲載のための料金を予算計上している。
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