糖尿病患者での網膜機能を網膜電図(ERG)で評価し、網膜血管形態を光干渉断層計(OCT)血管撮影(OCTA)で捉えて、比較検討することが本研究課題の目的とした。まず、100名の正常眼(男性50、女性50名)からOCTAを記録した。Superficial とdeep capillary plexus(それぞれSCPとDCP)を3x3と12x12 mm画角の画像で撮影し、vessel density(VD)を求めた。また、3x3 mmの画像に関しては、foveal avascular zone(FAZ)の大きさと脈絡膜毛細血管のVDも検討した。その結果、男女ともに年齢の上昇に伴ってSCP、DCPおよび脈絡膜毛細血管のVDが減少することがわかった。この結果から、年齢をマッチさせた正常者のデータベースが必要と思われた。次に、90名の糖尿病患者および正常者30名を対象として黄斑局所ERGとOCTAを記録した。正常者と糖尿病患者の年齢はマッチしている。糖尿病患者のうち50名の糖尿病患者はDRを発症しておらず、non-DR groupとし、他の40名は軽症の非増殖糖尿病網膜症を伴っておりNPDR groupとした。黄斑局所ERGは直径15度の刺激スポットを用いて記録し、各成分波の振幅(a、b波および OP波、PhNR)およびOP波の頂点潜時を評価した。OCTAは、3x3 mm画角の画像で撮影し、SCPとDCPのVDを求めた。黄斑局所ERGとOCTAで得られた所見との間の相関を検討した。OPs振幅および頂点潜時は、VDの拡大に伴って、それぞれ有意に低下および延長した。また、この相関関係はnon-DR groupでもみられた。以上の結果から、DR初期に観察される黄斑機能異常には網膜血管形態の変化が関与すると考えられた。
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