研究課題/領域番号 |
18K09421
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
小川 葉子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任准教授 (30160774)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ドライアイ / GVHD / 老化細胞 |
研究実績の概要 |
慢性移植片対宿主病 (graft-versus-host disease; GVHD)における老化免疫担当細胞の特定とその局在および動態を解明をおこなった。全骨髄細胞移植(ドナーB10.D2 マウス,レシピエント BALB/c マウス)を標準の移植として、これまでに ひとGVHD に酷似した経時的炎症と線維化形成の作成手技を 慢性GVHD マウスモデルの標的臓器で確立した。次に骨髄幹細胞の幹細胞老化と 眼GVHD の発症および進展との関連を調べた。骨髄から間葉系幹細胞 (MSC), 造血幹細胞 (HSC)をフローサイトメトリーで単離して移植し、経時的に涙腺をはじめ各GVHD各標的臓器での老化マーカーp16 の発現をFACS及び定量PCRにて移植後4週時8週時に検討した。 全骨髄移植を施行してImagingの手法で XenoLight Rediject Inflammation Probe (住商ファーマインターナショナル)を用いて炎症細胞浸潤部位を調べた。 Imagingの機器(Hamamatsu C9100-13 Image EM,;浜松ホトニクス社)を使用しGVHDの標的臓器にコントロールに比して炎症細胞が集積していることをLive mouseの状態で確認した。各標的臓器のミトコンドリアの変化を電子顕微鏡にて観察しGVHDではコントロール に比べてクリステの構築の障害が認められた。細胞質にはdamage-associated molecular patternと考えられる所見を認めた。老化マーカーp16, p21, DNA 損傷 マーカー53 BP1とγ-H2Axの存在の有無について前記各種抗体とPCRプローブを用いて免疫染色及び定量PCR にて調べたところ、GVHD標的臓器における細胞が老化マーカー DNA 損傷 マーカーを発現していることを認め遺伝子発現が上昇していることを見出した。老化細胞として最も可能性がある細胞はマクロファージであることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス慢性GVHDモデルにおける老化免疫担当細胞の特定とその局在および動態を解明をおこない、Imagingの手法でGVHDの標的臓器にコントロールに比して炎症細胞が集積していることを生存しているマウスで確認した。各標的臓器のミトコ ンドリアの変化を電子顕微鏡にて観察しGVHDではコントロール に比べてクリステの構築の障害が認められた。老化マーカーp16, p21, DNA 損傷 マーカー53 BP1とγ-H2Axの存在の有無を調べたところ、GVHD標的臓器において老化マーカー およびDNA 損傷 マーカーの蛋白発現と遺伝子発現が上昇していることを見出した。以上より研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は 老化細胞分泌形質であるSenescent Associated Secretory Phenotype (SASP) を分泌する老化細胞の細胞源の解明を行う 。 マウスドナーおよびレシピエントのマクロファージ、T 細胞、B 細胞、樹状細胞、ファイ ブロサイトをMACS beads (Miltenyi Biotec) を用いて単離して単培養、または前記各細胞を組 み合わせて共培養し、培養上清を ELISA (BD bioscience)にて SASP 関連主要サイトカインと ケモカインの培養上清中の濃度 を対照と比較し SASP 産生細胞を検討する。単離した細胞は細胞染色、ウェスタンブロット、 PCRを用い、SASP因子、老化マーカーの発現を遺伝子、蛋白レベルで検討する。 来年度は 老化細胞除去薬 による免疫原性線維化及び炎症抑制の検証を行う。選択的老化細胞除去薬を GVHDマウスモデルに投与し、移植後28日目のGVHD 各標的臓器におけるSASP 関連分子 の発現抑制 の有無を遺伝子と蛋白レベルで対照薬投与群と比較検 討する。Image J (NIH) を用いて標的臓器の単位面積あたりの線維化面積、炎症細胞浸潤数について検討する。老化細胞除去剤の有効性、毒性、副作用の有無、薬物動態をGVHDマウス モデルで検証する
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の合計金額が購入予定金額より安価であったため5519円昨年度残り、その際に当該年度内に使用する消耗品がなく2019年度に繰り越した。
2019年度は 慢性GVHD 涙腺、結膜及び各標的組織における SASP 関連分泌因子局在を証明 し、SASP 関連主要因子である IL-1β, IL-6, IL-8, CXCL1, CXCL9, MMP2, MMP3, オステオポンチンの発現を GVHD 各標 的臓器及び末梢血で免疫染色及び定量PCRを用いて対照 と比較して検討する。慢性GVHDマウスモデルに老化細胞除去剤を投与したあとのマウスGVHDの抑制効果も上記分子の抑制があるかどうかも検討する。前年度より繰り越した金額は、上記計画の組織切片作成に際し使用する組織用スライドとカバーグラスの購入に使用する予定である。
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