研究実績の概要 |
ヒト 移植片対宿主病(Graft-versus-host disease; GVHD) をよく反映するマウス GVHD モデルを用い、 GVHD涙腺において老化細胞に関わる分子基盤を調べた。老化細胞除去薬の効果を検討し次の点を追究した。 1) 眼 GVHD における老化免疫担当細胞の特定とその局在および動態の解明をめざし、老化免疫担当細胞は主にマクロファージがGVHD発症初期からGVHD涙腺毛細血管付近に検出された。 2) 眼GVHD に関わる主な老化関連分泌形質(Senescence-associate secretory phenotype; SASP)としてIL-6, CXCL9, オステオポンチンを同定し、マクロファージがSASP関連分子を共発現しており、SASPを分泌する細胞源のひとつであることを見出した。 3) 眼 GVHD に関わる SASP 関連分子抑制および老化細胞除去による新規治療法の開発を目標に涙腺における老化細胞の浸潤と老化細胞から分泌されるSASPに関連するサイトカインについて老化細胞除去剤のひとつABT-263をGVHDマウスモデルに投与することにより、GVHD涙腺の慢性炎症と単位面積あたりの線維化面積が抑制された。本研究を論文にまとめFASEB Jに掲載した(Yamane M,Sato E, Shimizu E, Ogawa Y, Tsubota K.et al. Senescent associated secretary phenotype promotes chronic ocular graft-versus-host disease.FASEB J 2020 34(8):10778-10800).老化細胞除去剤の有効性についてはABT-263の容量を振ってマウスGVHDモデルに投与したところ25㎎/kgがマウス涙腺GVHDを抑制する至適濃度であることを見出した。
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