研究実績の概要 |
国内の失明原因の第3位であり、人口の4000-8000人に1人という高率に生じる遺伝性神経変性疾患である網膜色素変性には、現時点で有効な治療法が世界的に無い。従来、網膜は検体採取が困難であることから、病態研究は困難であったことが一因である。しかし、申請者は遺伝子変異を持つ患者体細胞からiPS細胞を樹立し、分化誘導により網膜細胞を培養し解析する疾患iPS研究を行い、網膜色素変性に対する小胞体ストレスを標的とした神経保護治療の可能性を提案した(Yoshida, Ozawa, Okano et al. Mol. Brain 2014)。疾患iPS研究は、in vitroの実験であり、次に目標とされるのは、in vivoにおける効果の解析である。そこで、本研究では、次の段階として将来の新規治療法の開発、すなわち臨床応用につなげるために生体内での失明予防効果を解析した。そして、本研究では、網膜色素変性モデルマウスにおける神経保護治療の効果の解析を行った。ロドプシン変異遺伝子であるP23Hのノックインマウス(Sakami,Palczewski et al.Hum Mol Genet.2014]を用いて、小胞体ストレス抑制効果を持つ薬剤による治療介入を行い、その機能的および組織学的予後の解析を行った。申請者のこれまでのiPSテクノロジーを用いた研究を発展させ、将来のヒト臨床試験、新規神経保護治療法の開発につなげる解析をした。
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