研究実績の概要 |
申請者はこれまで、網膜局所における低酸素誘導因子(hypoxia-inducible factor; HIF)を中心とする異常な低酸素応答が、複雑で他因子疾患である加齢黄斑変性の病態形成に重要な役割を果たしていることを見出した。そこで、本研究課題では、個体の低酸素応答変化の解析、加齢関連疾患の低酸素応答制御による抑制効果の検討、HIF阻害剤投与による加齢関連疾患制御技術の創出を試みる。これまでにin vitroハイスループット・スクリーニング系を構築し、天然物から合成化合物、ドラッグリポジショニングのライブラリに至るまで、いくつかのHIF阻害効果を有する化合物を得ることができている。また本研究課題実施にあたり、様々な動物モデルに対する既知・新規のHIF阻害剤による表現型への介入を行ってきた。
当初の計画通り低酸素応答を標的とした網膜疾患制御技術開発がさらに確立された。研究期間内に、既知のHIF阻害剤トポテカンを用いて、網膜血管新生の評価系であるマウス酸素誘導網膜症(OIR)モデル(Miwa Y, Kurihara T, et al. Neurochem Int. 2019)、および網膜神経節細胞死の評価系である網膜虚血再灌流(I/R)モデル(Kunimi H, Kurihara T, et al. PeerJ. 2019)で得られた治療効果を報告した。さらに新規HIF阻害剤スクリーニングで得られたハロフジノン(Kunimi H, Miwa Y, Kurihara T, et al. Int J Mol Sci. 2019)、ヒドロキシクエン酸(Ibuki M, Kurihara T, et al. Int J Mol Sci. 2019)、ラクトフェリン(Ibuki M, Kurihara T, et al. Front Pharmacol. 2020)および魚類抽出物(Shoda C, Kurihara T, et al. Nutrients. 2020)、ビタミンB6 (Ibuki M, Kurihara T, et al. Int J Mol Sci. 2020)、フェノフィブラート(Lee D, Kurihara T, et al. Pharmaceuticals. 2021)の様々な動物モデルにおける治療効果を報告した。
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