研究課題/領域番号 |
18K09428
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
喜田 照代 大阪医科大学, 医学部, 講師 (90610105)
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研究分担者 |
奥 英弘 大阪医科大学, 医学部, 准教授 (90177163)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 網膜静脈閉塞症 / エンドセリン(ET-1) / vasoactivity / 自然発症高血圧ラット(SHR) / エンドセリン1受容体 / HIF-1 / レーザースペックル |
研究実績の概要 |
網膜静脈分枝閉塞症(BRVO; branch retinal vein occlusion)は、日常よく遭遇する網膜血管疾患で、黄斑浮腫を合併すると強い視力障害をきたす。高血圧や脂質異常症の関与が示唆されているが、発症メカニズムは未だ解明されていない。最近、BRVO眼の動静脈交叉部における静脈は閉塞しておらず管腔は保たれていること、さらに静脈自体がvasoactivityを有することが報告された(JAMA Ophthalmol 2015, IOVS 2016)。すなわち、静脈血管自体で起きる狭細化や先細りなどの形態変化が網膜静脈閉塞症の病態に関与している可能性が考えられ、BRVOの病態の本質は、今まで教科書的にも信じられてきた動静脈交叉部における静脈血管の機械的な圧迫閉塞ではない可能性がある。本研究では静脈の血管攣縮や異常血管運動と、それに伴う血流のdysregulationに着目した。 具体的には、血管内皮細胞より産生される血管内皮由来収縮因子であるエンドセリン(ET-1)をラットに静脈内投与して網脈絡膜血流および網膜血管の変化を検討した。さらに網膜フラットマウントを作成し、ET-1受容体の発現を健常ラットと自然発症高血圧ラット(SHR)で免疫組織化学的に比較検討した。 その結果、ET-1静注により網膜静脈の一部が狭窄し、レーザースペックル法で測定した網脈絡膜血流は有意に低下した。網膜フラットマウントの静脈血管において、ETA受容体の発現がSHRで亢進していた。さらに、網膜組織のウエスタンブロット解析では、ETA受容体および低酸素誘導因子(HIF-1)がSHRで有意に亢進していた。 以上より、網膜静脈自体がvasoactivityを有しており、ET-1がRVOの病態に関与する可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まずは計画どおり、網膜静脈自体がvasoactivityを有しており、ET-1が網膜静脈閉塞症の病態に関与する可能性を示唆する研究データが得られた。ただ、ヒトの網膜でみられるような網膜出血は生じず網膜静脈閉塞症の動物モデルの確立は現時点では困難な状況であるため、さらに模索する必要があると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は自然発症高血圧ラットを用いた網膜静脈閉塞症に関する研究で論文発表できたので、次年度は、脂質異常症のモデルとして自然発症アポE欠損(SHL)マウスや高脂肪食負荷を行うSDラットでもレーザースペックルフローグラフィ(LSFG)を用いて、ET-1を尾静脈より投与前後の網脈絡膜血流を経時的に測定する。同時に眼底写真あるいは動画撮影も行い、静脈血管の変化を記録する。また、上記のラットおよびマウスを灌流固定後、眼球を摘出し網膜組織を用いて、VEGF、iNOS、ET-1受容体A/Bの免疫染色を行い、網膜における局在を調べ、さらに健常ラットとの発現の違いを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
網膜の免疫組織化学染色に必要な抗体試薬を購入予定である。
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