研究課題/領域番号 |
18K09429
|
研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
二木 杉子 大阪医科大学, 医学部, 助教 (00403014)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 基底膜 / MMP / 血管新生 / 網膜 |
研究実績の概要 |
マウス新生仔(生後5~7日)の網膜において、発達中の血管基底膜の形態と蛋白質局在を免疫組織染色法により詳細に観察した。 生後5日目(P5)では血管網が網膜中心から辺縁へと伸展していく様子が見られる。このとき血管基底膜は、中心部の太い血管から辺縁部の血管伸長先端まで連続的に観察された。(1)特に新生血管の先端部では、最先端に位置するtip cellまで基底膜蛋白質の局在が確認されたが、tip cellから伸展するfilopodia様突起では基底膜様のシグナルは認められなかった。(2)一般的な血管基底膜の構成蛋白質であるラミニンα4、α5の局在を比較したところ、中心部の血管基底膜ではラミニンα4とα5両方の染色が見られたのに対し、血管伸長先端部ではラミニンα4のみが見られた。このことから、盛んに伸長する血管の基底膜と、ある程度安定化した血管の基底膜では基底膜蛋白質の組成が異なることが示唆された。(3) 血管伸長先端部の基底膜の形成・分解に関わる因子としてマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)に着目し探索を行ったところ、血管網の辺縁部にMMP-9、MMP-14が局在していることを見出した。いずれも血管壁に沿って局在しているだけでなく、まだ血管が進入していない網膜の辺縁部においても網目状に分布していることが見出された。 以上より、伸長中の網膜血管網においては部位によって基底膜組成が異なること、血管周囲にMMPが局在することが示された。MMPには基底膜や細胞外マトリックス分子を分解し、血管新生を促進する活性が報告されている。今後、網膜の正常な血管発生および病的な血管新生モデルにおいて、これらの基底膜蛋白質およびMMPの発現・局在を比較検討し、血管新生における細胞外マトリックスの制御についての解析を進める。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス新生仔の正常な網膜血管発生モデルを用いて、血管基底膜の構造および蛋白質局在を詳細に明らかにすることができた。また、基底膜分解に関わるMMPが新生血管周囲に分布していることを見出した。2018年度の当初の計画のうち、免疫染色による解析は十分に達成できたと考えられる。網膜の器官培養系も実験を開始し、培養条件の検討を行なっている。
|
今後の研究の推進方策 |
(1) 基底膜蛋白質の組成の変化やMMPの発現が、血管新生やリモデリングにどのように関わっているかを検討する。具体的には、MMP阻害剤などを導入し、血管の進展や基底膜の組成・形態にどのような変化が見られるかを解析する。(2) 未熟児網膜症モデルマウス実験系を開始し、網膜における病的な血管新生を誘導して血管基底膜およびMMPの局在を正常血管新生と比較検討する。(3) 基底膜イメージングモデルマウスを用いて、正常および病的な血管新生における基底膜の動態を明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
顕微鏡ステージトップ培養装置の購入を予定していたが、所属機関の共通機器で利用可能となったため購入をとりやめた。 パーソナルコンピューターの購入を予定していたが、製品発売状況等を勘案して購入を次年度に延期した。 国際学会への参加を延期した。 次年度は、2018年度に延期したパーソナルコンピューターを購入し画像処理等に利用する。また2020年度に開催されるAmerican Society for Matrix Biology meetingに参加を予定している。
|