研究実績の概要 |
前年度までにマウス新生仔網膜における血管新生を解析し、基底膜蛋白質およびマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)-9, -14の発現・局在を明らかにした。2019年度は未熟児網膜症のマウスモデルを導入し、病的な血管形成における血管基底膜の形態変化、基底膜蛋白質の局在、MMP-9, -14の局在について検討した。 未熟児網膜症モデルマウス(oxygen-induced retinopathy; OIRマウス)の作製は既報に従い、生後5日目の新生仔を高酸素(約75%)環境下で7日間生育させ、通常酸素(約20%)環境でさらに7日間飼育した。これらのマウスでは、高酸素暴露後に網膜中心領域の血管が大幅に消失し、通常酸素に戻した後には網膜辺縁部の血管の異常な拡張・蛇行などが観察された。Whole-mount蛍光免疫染色による観察では、これらの異常な血管網も基底膜を有しており、代表的な基底膜蛋白質の局在についても正常血管と顕著な差はないことが示された。MMP-9, -14の発現・局在については、正常網膜では生後14日目までに血管周辺で検出されなくなった。OIRマウス網膜においてもMMP-9, -14の染色は認められなかった。OIRにおける病的な血管出芽部と見られる部位についても同様に観察したが、新生仔期の生理的な血管伸長先端と比較して血管基底膜の異常やMMPの局在などは認められなかった。さらに高酸素暴露による血管退縮期の網膜を用いた免疫染色においても、特異的なMMP-9, -14の染色シグナルは認められなかった。これらの結果からOIRマウスにおける異常な血管退縮・新生にはMMP-9, -14の関与は低いことが示唆された。
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