前年度までにマウス新生仔網膜の血管新生過程における基底膜関連蛋白質の発現・局在を明らかにし、未熟児網膜症モデルマウスで病的な血管形成における血管基底膜の形態について検討した。2020年度は基底膜イメージングモデルマウス(Nid1-mCherry Tg)を用いて網膜血管基底膜のターンオーバーの可視化を行った。 申請者らが開発したNid1-mCherry Tgは基底膜蛋白質Nidogen-1と蛍光蛋白質mCherryの融合蛋白質を全身で発現し、様々な器官の基底膜のライブ観察が可能である。Nid1-mCherry Tg網膜では生後2週目で血管基底膜が蛍光標識されていることを前年度までに確認した。そこで2週齢の網膜を摘出し、器官培養下で観察を行ったところ、血管基底膜の蛍光が24時間以上継続して観察可能であることが示された。次に、培養下の網膜血管基底膜に対して局所的なレーザー照射を行い、Nid1-mCherryの蛍光を褪色させて観察を継続したところ、24時間後には一定程度の蛍光回復が認められた。24時間以降の12時間では蛍光回復の程度が小さかったことから、Nid1-mCherry蛋白質は照射後24時間のうちに比較的速やかに基底膜部位に集積することが示唆された。また、レーザー照射/回復後に網膜組織を固定し、基底膜や細胞への影響を免疫組織染色で確認した。レーザー照射部位の基底膜形態は蛍光免疫染色では異常は認められず、同部位での細胞死マーカーの増加も見られなかったことから、レーザー照射による局所的な損傷等の影響は大きくないことを確認した。これらの観察から成長期の網膜血管基底膜では過剰発現させた基底膜蛋白質が継続的に集積することが示され、血管基底膜がターンオーバーしていることが示唆された。
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